更新料を取るのを今すぐやめよう

入居者にとって、いちばんムカつくのは「更新料」です。24ヶ月もずっとまじめに家賃を払い続けてきたのに、「更新料」として家賃1ヶ月分を余分に払わないといけない?? まったくもっておかしい習わしです。24ヶ月もずっと家賃を払い続けたら、「ポイントがたまりました! 25ヶ月目はタダでお住まいいただけます!」といってもらいたいくらいです。

更新料は昔の習わし

更新料は一部都市の特殊な慣習ところで、なぜ「更新料」というものができたのでしょう? それは昔、相当な供給不足(空いているアパートが無く、入居者が行列をしている状態)だったころにできた習わしです。同時に「礼金」というのができました。いつまでも行列に並んでいられないので、住むところを世話してもらって「お礼をする」のが礼金です。これも、笑っちゃうくらい時代錯誤な風習ですね。ならば、礼金も廃止すべきかと言いますと、そうではありません。

一方で礼金は必要

公平な立場で考えても、マンション経営者は「礼金」に相当するお金はもらっておくべきです。名前は「保証金」でもなんでも宅建業法に問題なければ構いません。なぜかというと、賃貸マンションという大切な資産を人様に貸すわけですし、改正されたとはいえ「借地借家法」が入居者に有利にできているからです。入居者に有利とは、「家賃を滞納してもすぐにでていかなくて良い」ということです。

コンビニで「ガム」ひとつポケットに入れれば万引きです。万引きは犯罪です。100円のガムひとつ万引きしても犯罪なのに、10万円もする家賃を払わなくても犯罪にはならないのです。なんとも理解しがたいことです。

なぜそんな法律になっているかというと、やはり戦後の住宅難にことを発しています。住処はすべての基本であり、住処を失うことは生死に関わることという発想です。これと同じように、電気や水道はライフラインですから滞納してもすぐには止められません。それを悪用する入居者がいるから困ったものです。ケイタイを滞納するとすぐに止められるので、携帯代はちゃんと払って家賃を滞納する輩です。

家計の節約悪質な入居者に占拠されてからでは遅いです。相当な損失が出ます。 これを防ぐには入居審査を厳格に行うしかありません。もちろんお勤め先や保証人など厳格に審査しますし、カード会社のブラックリストに載っていないかも調査します。 でもやはり、「入居時にまとまったお金を用意できるかどうか」が大きな試金石となります。

礼金・敷金・入居斡旋手数料・来月分の家賃・引越し費用などで、50万円ほどは必要です。 逆に50万円ほどの現金が用意できない人は弾いておかないと危ないです。 ですから、礼金か保証料か、名前は別としてある程度の初期費用を預かることは絶対に必要なのです。

更新料をもらうよりも大切なこと

これに対して「更新料」。これはどこから考えても間違っています。入居条件として、ある程度の初期費用を設定してハードルを高くするわけですから、 そのハードルを越して入居してくださった入居者を大切にしないといけません。

そして一度入居していただいたお客様にはできるだけ長くお住まいいただけるように努力すべきです。 それはほかならぬ「入居率」を上げる、逆に言いうと「空室率」を下げるための努力です。

あらためて入居率について

入居率の計算方法ここで改めて「入居率」についてご説明致します。たとえば全戸数が10戸のマンションがあるとしましょう。入居率80%とは、10戸のうち8戸入居している状態だと思われることが多いようです。たしかに間違いではありませんが、実際にはもう少し詳しく計算します。

例えば2階建てで、101~105号室、201~205号室、合計10戸だとしましょう。 入居率はそれぞれの部屋ごとに計算します。 たとえば101号室。 24ヶ月間入居していたAさんが退去して、次の入居者Bさんが入居するまでに2ヶ月かかったとします。この時の入居率は、24÷(24+2)=92.3%です。 逆に、空室率は、2÷(24+2)=7.7%です。

入居率の計算方法 24-2

それぞれのお部屋で計算して、それを平均したものがそのマンションの入居率となります。

入居率を上げるには

では、どうすれば入居率を上げることができるでしょうか? 方法は2つありますね。 ひとつは、Aさんが退去したあと、次の入居者Bさんを早く見つけることです。そのためには、Aさんがいつ退去するかの情報を極力早く知る必要があります。といっても、「決まり次第教えて下さいね」とAさんにお願い知るしかありません(退去の1ヶ月前に通知、というのは通常です)。

退去を通知してもらう時期は2ヶ月前が限度

私のブレーンである入居者管理のプロが、入居者と良い関係を築く努力をした結果、早めに教えてくれる体制は作れましたが、現実として入居者自身が転居することを確実に判断するのは2ヶ月前が限界だということがわかりました。また、あまり早くから退去を予測して教えてもらったとしても、Aさんの事情が変わるかもしれないからです。そんなことがあれば、同じ101号室にダブルブッキングしてしまい、大問題になります。

ということで、退去の2ヶ月前に知らせてもらうのが限度です。 Aさんの退去情報を2ヶ月前に知って、新たな入居者を募集します。 ちゃんとしたマンションなら、2ヶ月間あれば次の入居者であるBさんを探すことができます。

AさんとBさんの入れ替わりには必ずブランクをともなう

Bさんが入居してくるのはたいてい月末の土日です。なぜなら、引越しが翌月の月初になってしまうと、前に住んでいたマンションの家賃を1ヶ月分払わないといけないからです。というのは、退去するときは日割り家賃にしてくれないことが多いからです。新たな入居者Bさんが入居してくるのは、月末の土日。これは確定。 ということは、今の入居者であるAさんに月の半ばで出ていってもらうのがベストです。

でも、そんな都合の良いことができるでしょうか? できませんよね。いつ出ていくかはAさんの自由なのですから。 ということで今までの経験では、ベストを尽くしても、約1ヶ月のブランク(空室)ができます。空室期間を1ヶ月として入居率を計算しますと、 24÷(24+1)=96.0%です。

入居率の計算方法 24-1

では、入居率を高くするにはどうしたら良いでしょう? そうです。入居者に長い期間住んでもらうことです。もし、3年住んでいただけたとしたら、入居率は次のようになります。36÷(36+1)=97.3%

入居率の計算方法 36-1

逆に、1年で出ていってしまったらどうなるでしょう? 12÷(12+1)=92.3%です。

入居率の計算方法 12-1

1年で退去さた場合と、3年間住み続けていただいた場合を比較しますと、97.3%=92.3%=5.0%、5%もの差がでます。5%と言われてもピンと来ないかもしれませんが、金額で言うとすごいことです。 たとえば、建築費1億円のマンションは1年間にだいたい1000万円の家賃収入があります。入居率が5%違うと50万円の差が出るということです。家族でハワイ旅行にに行ける金額です! 貯金をすれば10年間で500万円もたまります。 すごい金額ですね。

更新料は大きな退去理由

話が長くなりましたが、入居率を上げることは賃貸マンション経営にとって、一番たいせつなことです。 それを邪魔するのが「更新料」です。 入居者に聞き取り調査をしました。「退去された原因は何ですか?」

  • 1位が転勤(これはどうしようもないですね)
  • 2位が「更新料がむかつく」です

今すぐ、更新料を廃止しましょう。

更新時退去

長く住んでもらうための工夫

もう少し積極的に、長い年月住んでいただける工夫があります。それは、早い目にお部屋の設備を入れ替えてあげる事です。

たとえばキッチンを入れ替えるタイミングですが、普通は、今の入居者Aさんが退去したあと、新しい入居者を募集するときにリニューアルします。それはそれで悪くありませんが、Aさんの滞在中に申し出て、Aさんが喜べばAさんに新しいキッチンを使ってもらうという試みはいかがでしょう。 ひょっとしてAさん、気分を良くして、もう少し長い間住んでくれるかもしれません。

もちろん、退去するかもしれません。でも、ダメ元です。 どっちにしても、Aさんが退去したあと、キッチンをリニューアルする計画だったのですから。 この方法は、ダメ元なのでぜひやってみましょう。

冒頭に申し上げた、「ポイントがたまったので、25ヶ月目は家賃が無料です」という投資方法は危険です。そのときは大喜びですが、結局退去されてしまうかも知れないからです。

それよりもっと良い企画があります。例えば、「お掃除券」を差し上げるというアイデアです。 プロのお掃除やさんがきて、エアコン、キッチン、窓ガラス、お風呂などをピカピカにしてくれたら、どれだけ嬉しいでしょう? 料金は1万5000円くらいですみます。(テレビCMしている業者はもっともっと高いですが・・・)