空き家率の実態に迫る!

住宅は半世紀も前から余っている

「空室がどんどん増えている、空き家率15%を超えそうだ!」
これはまぎれもない事実です。総務省統計局が昭和38年からずっと調査している事実です。

空き家数および空き家率の推移(全国)

もう一つの表、「住宅数と世帯数」を見ても、昭和43年の時点でもうすでに住宅数は世帯数を追い越しています。つまり、住宅はもう半世紀も前から余っているのです。

住宅数と世帯数の推移

供給過剰でもうまくいく方法はある

だからといって、「今から賃貸マンション経営をはじめるのは手遅れだ」と考えるのはあまりに単純で乱暴すぎないでしょうか。 というのは、供給過剰はどんな業界でも当たり前のことだからです。

逆に供給不足は近年でいつ起こったかというと、第二次世界大戦の時です。成人男子はすべて兵隊さんに招集され、工場は空襲で破壊されたのですから当然、供給不足になります。

でも日本の回復力はすざまじく、戦争が終わって10年もすれば大抵のものはちゃんと供給されていました。それから高度成長を経て今までずっと供給過剰の状態が続いています。物を効率的につくる技術はますます進歩していて、ハイスペックの物が年々安くなってきていますね。

実用性だけで考えない

スタバの人気の秘密はでは、どの商売をしてもダメかというとそうでもありません。 たとえば昔は、喫茶店という個人経営のコーヒーショップが繁盛していましたが、だんだん衰退して消えていきました。

一瞬、「もはやコーヒーショップは採算がとれない」と考えてしまいますが、「ならばスターバックスの繁栄が何だろう?」ということになりますね。スターバックスはコーヒー屋さんではないわけです。「家でも職場でもない第三の居場所を提供する空間」なのです。ですからドトールコーヒーの2倍の値段でも満席です。

渡辺謙とワゴンR≒ステーキの後のお茶漬けもうひとつ例をあげさせてください。自動車です。もし自動車を、「雨に濡れず家族で安全に移動する手段」と考えるならば「軽四」で十分であり、それ以外の車は要らないということになります。実際、ハリウッドスターの渡辺謙はスズキのワゴンRのコマーシャルにでたのをきっかけに、「これ、気に入った!」と自費で1台購入したそうです。渡辺謙はご存知のようにかなり長身ですが「俺が乗ってもゼンゼン広々!」と喜んでいるそうです。

「でも、待てよ」と私は思ったのです。渡辺謙はフェラーリでも買える男。「ステーキのあとのお茶漬けは美味い」といいますが、「毎日お茶漬けだけ食って、美味いと言いきれるのか!」と思わずツッコミをいれている私がいました。だからこの不景気でもレクサスが売れたりするわけです。つまり、コーヒーを飲むことだけがスタバの目的でないように、安全に移動するだけが自動車の目的ではないわけです。

だったら、家族を雨風から守り、強盗から守るだけが家ではないはずです。 もちろん、「それで十分。安いほうが良い」という方もいらっしゃるでしょう。でも、そうでない方もいらっしゃることは、私の建築家としての長い経験からわかっています。

賃貸マンションも他の商品と同じで、「実用性」と「趣味性」と「芸術性」の3つの要素を持っています。それをどうブレンドしていくかで、無数の商品ができるわけですから、住宅数 > 世帯数 → 供給過剰 という公式は、まったく単純で乱暴すぎるのです。

ワンルームマンションは建てるべきではない

29㎡以下の増加率が高い

ワンルームマンションの急増

つぎに、上の2つの表をご覧ください。これも総務省統計局が調査した結果です。平成15年から20年にかけて、俗にいうワンルームマンションが急増したことを示しています(居住室数1室・延べ面積29㎡以下=まさしくワンルームマンション)。なぜこういうことが起こったかというと、不動産の証券化が始まったからです。

不動産の証券化≒不動産を細切れにして、一口何万円とか、で売る

ワンルームマンションは昔(1980年台)から投資用マンションとして扱われてきました。 事業者向けの1棟まるごと売りと、サラリーマン向けに1戸づつのバラ売りがありました。

なぜ、ワンルームマンションが投資用に選ばれたかというと、当時は高度成長からバブルに差し掛かる時期で、企業は新卒を確保するために社宅としてワンルームマンションを用意するほどでした。新卒の給料やボーナスは高いし、親の給料もボーナスも高いので、大学生もたくさんの仕送りを受けて、ワンルームマンションで裕福な暮らしをしていたわけです。

当時のワンルームマンションの専有面積は20㎡前後で3点式ユニットバス(バス・洗面・トイレが一体になったビジネスホテルタイプ)でしたが、その家賃は専有面積60㎡前後の3LDKの半額以上でした。専有面積は3分の1なのに、家賃は2分の1。つまり、1㎡あたりの単価は3LDKの1.5倍なわけです。しかも、1戸あたりの販売価格は手頃なので初めての投資としてとっつきやすかったのです。

さらに当時は、銀行も「どんどん貸せ貸せ!」で気軽に融資してくれました。

ワンルームマンションの供給戸数と専有面積

当時、1ルームマンションに投資するとどんな効果があったかというと、所得税の還付です。1ルームマンション投資は、全額ローンを組んでも家賃収入で返済できましたが、税法上は赤字になる仕組みになっていたのです。サラリーマンとしての給与所得と不動産所得を合算できたので、所得税が還付できたのです。 (当時は借入額全額が経費に認められましたがその後、土地代に対する金利は経費に認められなくなりました)

その時代はそれで良かったのですが、21世紀を迎えて状況は一変しました。 新卒も思うように就職できず、親の給与が伸び悩むどころか、いつリストラされるかわからない状態になったのは、皆さんご存知のとおりです。下のグラフをご覧ください。 この10年で、所得1000万円の人(黒線)の数は減り、所得500万円クラス(グレー)の人が増えたました。その結果、2001年に10万円だった仕送り額が、2011年には7万円弱に激減したのです。

父親の年収と仕送り額

その結果、当然、1ルームマンションの需要は激減しました。 裕福な家庭以外は地元の大学へ行く傾向になりました。片道1時間半かかっても通っている学生もいます。社会人は多少古くても不便でも安い家賃のマンションを選ぶしかないわけです。1人でワンルームマンションに住むよりも、2人で1LDKに住んだほうが安く住むというわけで2人住まいが増えています。また、シェアハウスも増えてきました。

これが現状です。余程の都心でない限り、ワンルームマンションは作るべきではありません。

家賃と景気変動

余談ですが、バブルはほんとうに凄かったですね。日本中がお祭りでした。私のところにももれなくお祭りはやって来ました。ちょっとだけ、私の恥を聞いてもらっていいですか?

1983年の結婚を機に小さな家を建てました。京都市左京区の庶民の街に26坪の土地を1950万円で買って、家は延べ23坪で700万円。経費を含めて総額2800万円だったことを覚えています。それが7年後の1990年に8700万円で売れたのです! その後のことはカッコ悪くって言えませんが・・・まあ、つまり、7年間で3倍以上になったわけです。団塊の世代の方はこんな経験をなさった方が多いのではないでしょうか?

その後、20年かけて土地の値段はだんだん元に戻っていったのです。では、その間、マンションの家賃はどうなっていたかというと・・・、それがこの表、いつものように総務省統計局の調査です。

賃貸マンションの家賃の推移

バブルは1988~1992年、つまり昭和63年から平成2年です。その時土地は3倍になり、建築費は2倍になりましたが、家賃はどうだったかというと、ほとんどバブルの影響を受けていません。順調に右肩上がりに毎年ゆるやかに上昇し続けてきたのです。それはちょうど、給与所得の増加率にリンクしています。考えて見ればそうですよね。家賃は給料から払うわけですから、土地が3倍になったからといって家賃が3倍になったら誰も払えませんよね。

いまいちど上の表をご欄ください。平成になって景気が悪くデフレが続いているのに家賃は下落していません。平成25年の調査はまだデータがありませんが、私の調べでは家賃は横ばいです。これこそが、賃貸マンション経営の「肝」です。ローリスクローリターンなのです。