人生を切り開く

終身雇用制度の崩壊

「良い学校を出て、良い会社に就職してちょうだい、お願い!」 たいていの親はこんなことを願っているのではないでしょうか。 なぜ、そう考えるのか。それは祖父母の時代のトラウマなのです。 貧乏人の子沢山で、大学まで行かせてもらえなかった彼らは中卒や高卒で就職して、ほんとうに悔しい思いをしたのです。 いくら仕事ができても大卒の人より常に給料が少ない、そして昇進できない。 大卒は幹部ホワイトカラー、中卒や高卒は工場で組み立て作業などを行うブルーカラーと 階層を分化されたのです。 祖父母は、自分は食わずとも息子を大学へ生かせてホワイトカラーにし、リベンジを果たしたのです。ホワイトカラーになって結婚し、つくった子供に自分の成功体験を そのまま継承させようとしているのが今の親、というわけです 。

ところがここで問題が生じます。それは終身雇用が持続可能な制度か?という問題です。終身雇用が制度として定着したのは意外と新しく、1970年代です。 起源としては1900年代から1910年代にかけて、転職がは流行していた熟練工を引き留めるために、大企業や官営工場が「定期昇給」や「退職金」や「年功序列」を取り入れたことによります。 そのあと第二次世界大戦でいったん衰退しましたが、1950年代からの高度成長期に復活しました。 そして1990年代から2000年代にかけての円高や不況の中、終身雇用や年功序列を続けるのは困難になり、崩壊への道をたどっていきます。

長い歴史から見ると、終身雇用制度や年功序列が成りたったのは、ほんの一瞬だったんですね。 それもそのはず、これらの制度がなりたつ条件は、人口分布がピラミッド型をしていて、なおかつ景気が良ことです。 しかし、ずっと人口が増え続けたら地球は破滅してしまします。

終身雇用制度の崩壊

つまり、終身雇用制度や年功序列はそもそも持続可能な制度ではないのです。
では、私たちはどのようにして職に就き、生きていけばよいのでしょうか?

 

自分の道を切り開くために必要な資質や心構え

その答えを一言でいうと、「生きていく」のではなく「生かせてもらう」ということになります。
いいえ、受身的ではいけません、もちろん宗教でもありません。 あくまで積極的に「生かせてもらう」こと。つまり、あなたがこの世の中で必要な人物であると認めてもらうことです。もうすこし簡単に言うと「人の役に立つこと」です。
人の役に立ち、喜んでもらえば、「この人は生かせておこう」ということになり、生きる糧、つまりお金が与えられます。別にあなたのことを好きなわけでもなく、愛情があるわけもない他人が、あなたを生かせておこうと思い、(本人は気づいていないが・・・)お金を払うわけです。

人の役に立つ

でも、「就職せずに、明日からいったい何をすればよいのだ?」ということですが、なにもこのオジサンのように、大それたことをしなくてもぜんぜんOKです。たとえば、お年寄りがスーパーで買ったものを宅配するシステムは、少し前まではありませんでした。水道修理110番という職業も最近できた職種です。どの家のキッチンにも緊急連絡先のシールが貼ってありますよね。以前なら水道工事業者に頼むしかありませんでしたし、運悪く土曜日に破裂したら、月曜日まで水浸しだったのです。 水道工事だけでなく、ちょっと器用な人だったら家のあちこちを修理してあげることもできますし、寂しい人の話し相手になってあげることも仕事になると思います。
 このように、人に喜んでもらえる仕事は無限にあります。 独立、起業というと、フランチャイズに参加することを思い浮かべるひとが多いようですが、はっきり言ってその時点でダメです。利益はあなたに回ってきません。システムを構築した人が利益を吸い上げますから、あなたに与えられるのは酒の搾りカスのようなものです。易きに流れてはダメです。(楽な方を選んではダメ)

易(安)きに流れるな。田(田)のあぜの細きがごとく、高尚(昌)への道は長く険しい。志を貫けば広(弘)き未来が開かれる。

この詩は、私が中学を卒業するときに、恩師に書いていただいたものです。 カッコ内が私の氏名、安・田・昌・弘です。恩師は卒業生66名すべての氏名に当てはめた激励の詩を作ったのです。よくぞまあ旨くまとめたものだ!と感心していましたが、たいていの親は自分の子供に立派に育って欲しい、幸せになって欲しいと願って名前をつけるわけですから、激励の詩はつくりやすいともいえますね。

なのに親は、子供が「易きに流れる」ような就職を希望します。易きに流れるとは、「楽な方を選ぶ」ことです。一見、楽に見えますが、それは近視眼的、短期的な選択であり、そのとき得をしたような気になっていても結局、損をすることになります。なぜなら多くの人が楽な方を選ぶので、結果として競争率が高くなって後でしんどい思いをしますし、もちろん希少価値がないので値崩れしやすくなるからです。

自分の道を切り開くためのポイント

「好きこそものの上手なれ」ということわざがあります。
「人は好きなものに対しては熱心に努力するので上達が早い」という意味です。上達が早いのも事実ですが、もっと大切なのは、好きなことをしていると疲れないということです。疲れないから打ち込める。打ち込めるから上達する。好きな仕事
逆に「下手の横好き」ということわざがありますが、「横好き」とは、本業ではないもの(つまり横にそれたもの。趣味など)を好むことであり、下手なくせに趣味などに熱中している様子をいいます。 では、本業と趣味の違いはなんでしょう? それは、飯を食えるか、食えないか、です。

他人は、あなたの趣味にお金を払ってくれません。では、人がすすんでお金を払う気になるのは、どんなときでしょう。大きく分けて3つのケースです。

1. 自分はやりたくない仕事をだれかに代行してもらうとき
2. 自分でやろうと思ってもできないとき。(つまり専門技術)
3. 芸術性に感動したとき(プロスポーツや芸能はこれに含まれます)

ここで大切なのは、3つの要素のうちどれか1つを選ぶのではなく、あなたの特性に合わせて、うまくブレンドすることです。
やりがいや収入は、3つの積(掛け算の答え)に比例しますので、遣う時間やエネルギーの総和が同じであっても、ブレンドのしかたによって積が大きくなったり小さくなったりします。つまり、効果的な努力をするのと、ただひたすら頑張るのとでは収入がぜんぜんちがってくるということです。

/h3>リスクとその回避

まず考えられるリスクは、大企業につぶされるリスクです。
あなたが新しい事業を発案したとしても、やつらは、「儲かる!」と思えばすぐに参入してきます。 大企業の仕事のやりかたを整理すると次のようになります。

1. 多くの人から、少しずつ、継続してお金を吸い上げる
2. 10人中8人に嫌われない商品やサービスを提供する
3. 複雑なことや高度な技術を分解してマニュアル化する

1の代表は、スマホ、マクドナルドです
2の代表は、ユニクロ、ニトリ、タマホームです
3はパソコンや家電など、日本のお家芸です。

なぜ大企業がこのようなやり方をするのか?
それは大企業ゆえに大量に売り上げないといけない。だから、一般受けする商品やサービスを、所得の低い人でも買得る値段で提供するしかないのです。そして急速に業績を拡大するために、マニュアル化するのです。 職能を訓練するために5年も10年もかかっていては、展開が遅すぎるのです。 リスク回避するには、あなたは大企業の逆を行けばよいわけです。

リスク回避

1.他と値段で比較されない商品やサービスと扱いう。つまり上客を狙う
2.10人に1人、いや100人に1人だけに猛烈なファンになってもらう
3.マニュアル化できない仕事。職能を訓練するのに最低5年はかかる職種を選ぶ

そんな職種があるのか? と思われるかも知れませんが、職種という大きな「くくり」でなく、もっともっと細分化すれば、人間一人分の生活費くらい得られる仕事はいくらでも創れます。職業の数は人間の数だけあるといっても過言ではありません。 お店に例えれば、コンビニと間逆にすることです。コンビニは、これといったものは何も置いてませんが、とりあえずコンビニに行けばなんで揃っています。 あなたのお店には、特定の人だけがどうしても欲しがるもの、1点だけ置いてください。こんなことが可能になるのはネットと宅急便が発達したからです。

もちろん上記は概念であり、実行するには汗をかくほど知恵を絞らないといけません。もし、あなたがサービス業をするなら、人間力を磨いてください。サービスの内容ははっきりいって他者とそれほど差別化できないと思います。
重要なのは「この人のお世話になりたい!」と思ってもらえる人格になることです。
あと、起業する人が陥りやすい失敗とその対策を簡単に説明します。

   × 仕入れたが売れない
→ ○ 売ってから仕入れる
→ ◎ 在庫のいらない職種を選ぶ

このようなヒントは、日本を代表するマーケッター、神田正典先生の初期の著書に惜しげもなく書かれています。間違いえなく、あなたの人生は変わります。

安定軌道に乗せる方法

ズバリ、お金を浪費しないことです。 たくさんの人が失敗するのは、先に体裁を整えるからです。
たとえばイタリアンレストランの開業を考えているとしましょう。イタリアへ単身で乗り込んで本格的なイタリアンを学んでくる。そこまではまあ、正解です。では次に何をしたくなるでしょう。人通りの多い場所にテナントを借り、本場イタリアン顔負けないくらいのインテリアにして、スタッフを教育して、さてオープン。そしてお客が来るのを待ちます。こんなやり方では毎日まいにち、お金がダダ漏れです。3ヶ月もしないうちに店をたたむことになるでしょう。

正しい順番はこうです。
いろんなイタリアン料理店で食べくらべて、それに負けないレベルまで修行する。つぎにお客を呼びこむ努力をする。最初は出前でOK。店舗をつくったりスタッフを雇ったりするのは、お客が増えてからです。 毎月入ってくるお金が、出て行くお金より少しでも多ければ、永遠に仕事は続けられます。逆だとすぐにタオルが投入されてしまいます。雑草のように強く
 一番もったいないのは、家賃でしょう。 繁盛してもしなくても同じだけ持っていかれます。 ところが家賃は1日8時間しか使わなくても、24時間使いまくっても同じです。だったら、24時間つかいましょうよ! お昼間は仕事場として、夜は家として使いまくりましょう! 
 そしてスタッフは絶対に雇わないこと。自分だけだった貧乏は我慢できます。貧乏してもだれも文句言いません。(パートナーにはコテンパンに言われますが・・・) 税務署もきません。家賃と人件費さえ払わなかったら、まず倒産はありえません。

「お金を使わず、知恵遣え!」です。

理想的な生き方

【 目指す事業規模はどれくらいが理想か 】

事業規模は「あなたの器」に従うのが一番です。
ひとには生まれながらにして「器」というものがあります。あなたがリラックスできる規模が良いでしょう。なかには事業規模を大きくすること、どんどん店舗を展開していくことにワクワクするという人もいますし、一人でコツコツやるのが性に合っているという人もいます。
でも私は、あまり大きくすることをお勧めしません。これは元スターバックスCEOの岩田松雄さんのお話ですが、彼がCEOになったとき、先輩経営者から「これで岩田君は仕事から離れられなくなったね」といわれたそうです。岩田さんは意外な気がしました。「いいえ僕は、これからフリーな時間をつくって、やりたいことをやり、体調も整えようと思っているのです」と返したそうです。
ところがCEOに就任したとたん、休みの日も仕事のことが頭から離れなくなってしまったのです。

岩田さんは次のようにも言っています。社員の給料が10年後も同じというわけにいかない。結婚して子供もできるし、昇給していかないと社員が充実した人生がおくれない。昇給を実現するためには店舗数を増やして、事業を拡大するしかない。
これでは元の木阿弥というか・・・結局、社員の人口分布をピラミッド型にするということになります。
2014年現在、全終身雇用と言えるような実態は従業員1000人以上の大企業の男性社員に限られており、その労働人口に占める比率は8.8%にすぎません。

話を元に戻します。では一人でコツコツやるのが一番良いのかというと、そうでもありません。あなたもご存知かと思いますが、「8:2の法則」というのがあります。
たとえばあなたが10時間働いて1万円稼いだとしましょう。普通に考えると時給千円ですよね。でも実は、わずか2時間で8千円稼いで、のこり8時間も使って2千円しか稼いでいないのだ、とう法則です。
他の例だと、全体のわずか2割のお客様が利益の8割を稼がせてくれて、のこり8割のお客様が利益のたった2割しか稼がせてくれないとい法則です。つまり、「濃い時間」と「薄い時間」そして「上客」と「そうでない客」があるということです。

この法則はどんなことにも当てはまります。 たとえば、NYヤンキースの田中投手は1球投るごとに75万円稼ぐそうですが、もし彼が自分自身で確定申告をやったら、どれだけドンくさいか容易に想像できますね。そんなことは税理士に任せばよいのです。極端な例で恐縮ですが、つまりあなたは自分の得意分野をもっと磨くことに時間とエネルギーを費やして、あなたがやらなくてもできることは部下に任せ、もっと単純な仕事はバイトか外注しましょう、という意味です。
そう考えると、信頼の置ける2,3名のスタッフは必要かもしれません。

理想の仕事像をどう描くか

理想の仕事像とはズバリ、「こちらから売り込むのではなく、お客様から依頼される」ことでしょう。お店で言えば行列ができる店。情報誌が「記事」として、もちろん無料で掲載してくれる店。口コミでお客が集まる店。

ここで大事なのは、調子に乗って事業規模を拡大しないことです。その理由は事業を拡大すれば忙しくなるし、その割に利益がでないからです。先ほど紹介した8:2の法則にあてはめればすぐにわかります。全体のわずか2割のお客様が利益の8割を稼がせてくれて、のこり8割のお客様が利益のたった2割しか稼がせてくれないという、あの法則です。こちらから宣伝してお客をかき集めた場合、上客もそうでない客まざってしまいます。これを「貧乏暇無し」といいます。

逆に、「こちらから売り込むのではなく、お客様から依頼される」というスタイルになれば、あなたは2割の上客を選んでサービスと提供できるわけです。そうなると、あなたは時間を自由に使えるようになります。もちろん、パチンコへ行って暇つぶししてはいけません。上客はどんな生活をして、どんなことに悩み、どんなことに感動するのかを理解できるようになるために、上客が生きる環境を体験してみることです。そしてさらに、上客に喜んでいただける存在になるのです。もちろん、自由になった時間のすべてを研究に遣えというのではありません、半分くらいはプライベートにつかいましょう。

仕事とプライベートのバランスの理想はどうか

週休二日制が一般的になったのは1990年代です。
ところが経営の神様として有名な松下幸之助さんは、週休二日制という言葉すらなかった昭和40年(1965年)に実施されました。 実施するに当たって、「社員が、増えた1日の休みを単なる遊びに終わらせないで、経済人、社会人として向上するための勉強に充てるよう」と仰ったそうです。さすが!
私は日本人として、日本という環境(資源や植民地がなく、知恵を絞って働くしかない環境。そして冬は結構寒いという環境)において、松下幸之助先生が仰ったバランスがベストと考えています。

私がそれに付け加えて実施しているのは、体育の時間です。お昼休みをすこし長くとって、スイミングを週4回行います。ほんの30分ほどですが、午前中に疲れた頭もリフレッシュされますので、お昼からもクリエイティブな仕事が可能になります。職場は自宅から自転車で20分くらいと、適度な運動と気分転換になる距離に決めました。 昼食は13時を回ったころに行きますので待ち時間はゼロです。美容室にも平日行きます。もちろん海外旅行も、お正月やゴールデンウイークにはいきません。

サラリーマンは拘束されていて、時間は思うように使えませんし、会社の都合で住む場所まで変えないといけません。(転勤は、私に言わせれば人権にかかわる問題です) 独立起業すると、一般のサラリーマンとくらべて1日1時間以上は時間が節約できます。1日1時間がどれほど大きいかお考えになったことがありますか? 1ヶ月で20時間、1年で240時間にもなります。1日8時間の仕事として、なんと1か月分もの時間が湧てきます。「時は金なり」です。ちょと安いからといって車で遠くのスーパー買いにいくのは、「薄い時間」の使い方です。あなたはもっと「濃い時間」の使い方をしなければなりません。バランス感覚 さて、仕事とプライベートのバランスですが、もちろんプライベートを優先すべきです。でも、プライベートと仕事がぶつかったときにプライベートを優先せよという意味ではありません。先にプライベートのスケジュールを決めておいて、それにバッティングしないように仕事のスケジュールを組むという意味です。 「空いた時間に休もう」ではダメです。絶対に時間なんて空きません。

それらの理想を実現するためにどうすべきか

ずいぶん長く語ってきましたので、整理してみるしょう。

1.易きに流されない
2.自分が好きな分野で、5年以上の修行が必要な職種を選ぶ
3.人がやりたがらないこと、専門技術、芸術性をうまくブレンドする
4.開業当初は人を雇わない、家賃も払わない
5.事業規模は信頼のおけるスタッフ2,3人とする
6.上客だけに絞りこむ
7.プライベートを優先してスケジュールを組む

この流れに沿って、あなた自身の将来を考えて見ましょう。きっと、おぼろげながら、何か見えてくるはずです。

 

選択肢のひとつとして、建築家

【 独立する職業として建築家を選ぶ理由 】

とつぜんですが、私が尊敬する建築家、安藤忠雄先生を例にあげさせてください。尊敬する理由は「自ら仕事を創造せよ」という先生の持論がいたく気に入っているからです。ここから先は、私が安藤先生について勝手に思っていることですので悪しからず。

安藤先生はいろいろな方面に優れた才能をおもちの方だと思います。逆にいえば、もし芸術性だけ、建築技術だけに特化したとして世界のトップかといえば、そうでもないと思うのです。安藤先生のすごいところは、バイタリティー、人を動かす力、リーダーとしてのカリスマ性です。その良い例が表参道ヒルズです。表参道ヒルズを訪れて私が感動したのは、デザインや空間ではなく、「よくぞまあ、これだけたくさんの人を納得させたもんだ!」という、人間力です。

青山アパートメント

表参道ヒルズの敷地にはもともと、関東大震災の後の復興のため同潤会がつくったアパートメントが建っていました。その名を「同潤会青山アパートメント」といい1927年に完成しました。そこには138世帯もの人が住んでいました。138世帯もいればいろいろな意見を持つ人もいますし、建物自体にも近代日本の歴史を伝えるものとして、機能を超えた歴史的価値があります。ですから安易な建て替えでは納得してくれません。実際、工事が始まるまでの調整期間に8年もの歳月を要しました。安藤先生は8年ものあいだ、理解を得るためにエネルギーを投入されたのです。その後3年あまりをかけて表参道ヒルズが完成しました。ひとくちに8年といいますが、気が遠くなるほどの年月です。もし納得が得られなかったら、このプロジェクトはつぶれるわけです。そうなればさすがの安藤忠雄建築研究所も傾くかもしれません。ですから先生はつねに命がけで格闘していらっしゃるのです。 このように、建築家というのは、絵画や彫刻のような純然たる芸術家であっては勤まらないのです。建築物はオブジェと称するにはあまりに巨大であり、莫大な建築費を必要とします。事業主としてもその建物に実用性がないと資金を回収できません。また、建築現場周囲の住民の方に迷惑をかけずには建築工事はできません。さらに、建築物が街並みに影響を与え、文化を形成していきます。表参道ヒルズ
このように建築家とは、たいへんな責任と最上級のやりがいを味わえる総合プロデューサーなのです。 なぜ、安藤忠雄先生を例に挙げさせていただいたかといいますと、建築家とはどんな職業かを知っていただくと同時に、ここに「生きていく知恵」が隠されているからです。 今一度、先にあげた3つの要素を思い出してください。

1.自分はやりたくない仕事をだれかに代行してもらうとき
2.自分でやろうと思ってもできないとき。(つまり専門技術)
3.芸術性に感動したとき(プロスポーツや芸能はこれに含まれます)

建築家は専門技術はもちろん芸術性も必要とします。さらに周囲の住民との交渉が大きな仕事になります。これには、人間力とバイタリティーが必要です。左脳で論破したとしても、右脳で納得してくれなければ人間は動きません。そのためには、人の痛みを知り、愛情を持ち、情熱を加え、感動を与える必要があります。また、趣味で建物を建てる人は稀ですから、事業としての経営感覚も必要になります。 ざっとみただけでもこれだけ多くの資質が必要なのです。 どうですか? すっかり滅入ってしまいましたか? バイタリティーがないですね。 でもまあ、そんなにおじけづくことはありませんよ。 これだけ多くの項目があるからこそ、それぞれの項目については天才級の才能がなくてもやっていけるのです。
ある意味、やっていきやすい仕事といえます。知恵の出しどころがいくらでもあるからです。延び代があるというか・・・ 私が思うに、建築家としてもっとも大事な資質は、バイタリティーと困難を打開する知恵ですね。プロゴルファーがバンカーに入ったとき実力を発揮するように。

建築家としてクライアントや社会に貢献できること

とつぜんですが、建築家ほどすばらしい職業はありません。なぜならクライアントの幸せをお手伝いできるからです。
実際、建築にはとても力があります。たとえば住宅を設計したとき、家族の団欒が盛り上がる空間もつくれますが、へたをすると引きこもりを促進してする家になったりもします。
健康を促進する家も作れます。高齢者に優しい、そして介護する人の負担を減らす家もつくれます。 事業用の建築の場合ですと、ワクワクするようなキャンパスを創れば入学希望者が確実に増えます。病院では患者数が確実に増えます。レストランなら満席になります。
あとは運営者が顧客の期待を裏切らないように内容を充実すればよいのです。 このように、建築設計の如何で、クライアントに良い影響、しかも人生を左右するほど大きな影響をあたえることができます。

ある道沿いにお洒落な建物ができると、良い刺激がつたわって、その道沿にまたお洒落な建物ができてどんどん伝播して、通りそのものがおしゃれになることは良くあることです。 また、良い建物として認められれば、その建物は解体されることなく、長く遣いつづけられます。べつに何かの賞をとらなくても、魂の入った建物と、いいかげんな建物の見分けは普通の人でもちゃんとわかってくれるものです。長く遣い続けられたら、地球をすこしでも長持ちさせることに貢献できます。

建築家の職能の寿命はどれくらいか

建築家の職能はとても長いです。
建築家として生きていくためには単に建築技術の習得だけでなく、とても幅広い知識が必要になります。また、倫理観をもった深い思慮を必要とされます。というのは、建築家は人の命を預かる仕事であり、大きな財産を扱う仕事でもあるからです。失敗は許されません。ですから建築家として独り立ちするには多くの経験を積む必要があり、デヴューはどうしても遅くなります。

新進気鋭のデザイナーもいますが、街並みに大きな影響を与えるほどのプロジェクトになると、やはり総合的な人間力がものをいうので、人生経験の豊富な人に白羽の矢がたつのです。 一般的に、建築家としてクライアントから認められ始めるのが35歳。そして引退はおそらく72歳くらいでしょう。なぜなら、私が尊敬する宮崎駿先生が72歳で引退なさったからです。

宮崎駿先生

宮崎先生の活動を取材したTV番組やDVDを良く観察すると、宮崎先生はまだまだ発想力は豊かでつぎつぎとアイデアが浮かんできますが、いかんせん体力がついていきません。だからそれくらいが限界ではないかと思います。(80歳になってエベレスト登頂に成功した人もいますが、彼は超人でしょう)

それにしても幸せですよね。なんたって定年がない。しかも最近、脳科学者から次のような研究結果が発表されています。「特定の病気が生じなければ、脳は常に若いまま維持することができる。むしろ年齢とともに、学習のおかげでシナプスの結合は増加する」 だからといって、老いぼれ判断されればクライアントから起用してもらえません。だからこそ私は、週4回のスイミングと、週1回の整体矯正、そして往復40分の自転車通勤を実行しているのです。美容にもお金を遣っています。

建築家の報酬はキャリアを重ねるほど確実に多くなります。その理由は経験を積むほどプロデューサーとしての総合力が増していくからです。 もし、一般のサラリーマンより10年ほど長く現役生活ができたら、年収1000万円として合計1億円ほど多く稼ぐことができます。 一般のサラリーマンの生涯賃金は平均2億8000万円だそうですから、1億円という金額がどれほど大きいかお分かりかと思います。 当てにならない公的年金に不安を覚えながら人生をおくる必要はなくなりますし、なんといっても、自分の好きな仕事で世の中に貢献できる晩年というのは、この上ない幸せではないでしょうか。

建築家の作品と他の仕事の成果物との違い

いちばんの違いは、賞味期限でしょう。
建築物はしっかりつくれば何百年でももちます。 自分がこの世からいなくなっても、次の代もまた次の代も、建物は生き続けます。 その点、いくら芸術的なフランス料理を創っても、30分後には胃の中でぐちゃぐちゃになってしまいます。でも、余韻がのこって、またこのお店に着たいと思うでしょう。 つまり、リピーターがくるわけです。

建築家にはリピーターはとても少ないです。もちろん分譲マンションの開発業者からは何度も設計の依頼はあるでしょうが、それは作品といえるのかどうか・・・疑問です。 一般的にはリピートしてくださっても2回か、多くて3回です。 だからいつも、新規のお客様を発掘しなくてはなりません。

しかもプッシュ型(こちらから押しかける形式の営業)はダメです。あくまでクライアントのほうから「お願いします」とうスタンスでおいでいただかないと成り立ちません。(つまり設計事務所として経営がなりたたない) 建築家の仕事は形(物体)がありません。建築工事費は工務店(建築会社)に支払うものです。設計料を考えるとき、建築家の仕事は美術品にちかいと思います。値打ちを認めていただいた方にのみ依頼していただくのです。決してTVショッピングで売るようなものではありません。

ここが他の仕事ともっとも違うところかもしれません。

憧れの職業としての建築家

1996年。いまから20年近く前、建築家が主役の「協奏曲」という人気ドラマがありました。
主演は田村正和と木村拓也。このキャスティングを見ただけで憧れの職業ですよね! 田村正和が有名建築家、そのひとに憧れて一流の建築家を目指すのが木村拓也・・・ヒロインが宮沢りえ。もう最高のシチュエーション!建築家ドラマ
2014年はどうか? 心配になってネットで検索してみました。
「13才のハローワーク」の人気職業ランキングでは、建築家は100業種中21位でした。うれしい!
一方、東進が運営している「憧れの職業を追え!」には65種類の職業がありますが、建築家も設計事務所も建築士もなく、かろうじてインテリアデザイナーがありました。まあ、同じくくり、なのかも知れませんが・・・ちょっと気になります。
13才のときには建築家はけっこう人気があるのに、18才になると忘れられる・・・ 他の職業で同じような傾向にあるのは、漫画家、歌手、パテシエです。まあ、たしかに東進で受験勉強しなくてもなれる職業、ということなんでしょうか・・・ まあ、ぼやきはこれくらいにします。

やはり「失われた20年」なのでしょう。20年間続いたデフレが「夢を追う」ことを封印してしまったようです。 でもまた、夢を追う時代が来ました! いろいろな学校や企業が、夢を追う若者を応援しています。 建築家は憧れるのに十分値する職業ですよ。

感謝される職業としての建築家

建築家として長年やってきていちばんうれしいのは、クライアントが何年たっても喜んでくれていることです。自分の建物に誇りをもってくれています。手前味噌ですが、ひとつ例をあげさせてください。
独立してすぐ、私を起用してくれたお客様とは今もお付き合いしています。その方のご主人は大学の英語の教授で、奥様はごくふつうの専業主婦でしたが、先代が残してくれた小さな土地をうまく利用して収益を上げる建物を設計させていただきました。それを運営することを通じて奥様はビジネスに目覚めたようです。オーストラリアのゴールドコーストに旅行したとき、収益型コンドミニアムに出会って欲しくなりましたが、大学教授であるご主人はビジネスに無頓着であり、「おまえがやりたいのなら勝手にやったらいい」と手伝ってくれません。奥様は中学生レベルの英語力でしたが、はじめての海外の不動産投資に死に物狂いで取り組みました。命がけで取り組むというのはすごいことですね。中学生レベルだった会話力はみるみる上達し、とうとうご主人を追い越すまでになりました。その後、コンドミニアムを3つほど買って、それらを売却したお金でウォーターフロントでプール付の豪邸を手に入れたのです。OLYMPUS DIGITAL CAMERAそして私を招待してくれました。「どうしても安田さんに見て欲しかった!」と言われたときは本当にうれしかったです。「地味な主婦で一生終わると思ってたのに、こんなことができるようになるなんて夢のよう! 安田さんのお陰!」といってくれたときは、生きてて良かったと思いました。そして、もう30年近く前に設計させていただいたロフト付のマンションは今でも満室で、奥様が自分でペンキ塗りをしたりして可愛がってくれています。業者に頼まず、自分で手をかけて育てていくことも、海外で学ばれたのですね。

建築家は実は安全な職業

建築家なんて海のものとも山のものともわからない・・・ (物事の正体・本質がつかめず、将来どうなっていくか見当のつかないたとえ) そう思われてもしかたありません。
大学の建築学科では、建築家の仕事の内容を分析してわかりやすく説明してくれる口座はありません。なぜ私がそう断言できるかというと、数年前に20校の大学と専門学校へ手紙を送ったことがあるからです。「建築家として将来独立を希望している学生に、建築家とはどんな職業か、どんな資質が必要か、どうすれば経営がなりたつか、など教えたい」という旨でした。そしたら、19校に無視されて、1校の専門学校から返事がきました。 「尊いお申し出ありがとうございます。しかし本校の学生は先生のお話を聞くほどのレベルには達していません。またその節はよろしくお願いいたします」と、遠まわしのお断りでした。

つまり、建築学科は建築技術のみを教え、芸術系の学校はデザインだけを教えるわけです。教授陣もその専門家ですし、カリキュラムもそうなっているのでしかたありません。 ところが実際は私がお話したように、建築家はさまざまな要素を必要とする仕事なのです。 プロスポーツや画家は、芸術性一本で勝負しなくてはなりません。だから、天才的な才能がないと食っていけません。 ところが建築家は「さまざまな要素を必要とされる総合プロデューサー業」なのです。 ひとつひとつの才能は天才的でないにせよ、幅広い知恵とバイタリティーと人徳あればやっていけます。

ただし勘違いしないでくださいね。器用貧乏はダメですよ。 「これだけは誰にも負けない!」と自信を持っていえる分野を1つ持たないと、スタッフはついてきてくれません。あの秋元康先生の仕事のほとんどはプロデューサーだと思いますが、「私の本業は作詞家だ」と名言されています。 ※ ちなみに、プロデューサーとは(世界大百科事典より) プロデューサーは芸術と企業の接点の役割を担っている。 プロデューサーは作品,テキスト,演技・演奏者,スタッフについての感覚と知識を有していなければならず,一方,金銭的な面や,製作進行・日程管理などについても責任を持っている。

最後になりましたが、建築家がサラリーマンよりも安全な職業である理由をお教えします。 サラリーマンのお得意先は一人です。そう、あなたが勤めている会社の社長です。 リストラされた時点で一気に地獄まで落ちます。 ところが建築家のお得意先が一瞬にして全滅するということはありません。たとえば10人の見込み客があって、最近どうも2人くらい調子が良くないと思ったら、また種をまいて3人ほど育てればよいのです。このように常に新たな種をまいて、育てて、芳しくない苗は元気な苗に取り替えて、整備していけばよいのです。

最終更新日: | 投稿者:, G+

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