30年先のマンション市況と単身者用1LDK

日本人の意識と行動を予測することによって、30年先を読み、マンション市況を考えていきます。「30年先を読む」といっても、なにも魔法や霊感ではありません。そんなことに頼らなくても、普通に読めるのです。この数年「少子化で大学経営が大変だ!大学も生き残りの時代が来た!」と慌てふためいている学校経営者がいらっしゃいますが、「今年18歳になる人が何人いるか?」は18年前に確定していたわけです。 18年前の0歳児の数より、今年の18歳人口が増えるはずはないわけです。これはリスクでも予言でもなんでもなく、幼稚園児でもわかる事実であります。なのに、「少子化で大学経営が大変だ!」といっている大学の先生様がいるのも事実です。まったくあきれたものです。でも、笑ってばかりはいられません。この手のレベルの低い悩みは賃貸マンション経営の世界でもよく見られることだからです。

30年先のマンション市況

「30年先を読める」と言いましたが、30年先の賃貸マンション市況を読むことは30年先の30歳人口を読むほど単純ではありません。でも、近代からの歴史と、世界における日本の地位の変化を勉強し、現在の日本人の意識と行動を調べれば、ある程度流れがつかめますし、今後こうなっていくだろうと推測することもできるものです。これらを勉強するとしないとでは、賃貸マンション経営の成否に大きく影響することはいうまでもありません。

日本人の意識と行動

日本人の意識と行動―日本版総合的社会調査JGSSによる分析ここに「日本人の意識と行動」(東京大学出版会)という本があります。これは日本版総合的社会調査(JGSS)といって、「所得と出産行動」「少子化社会における結婚観」「働くことの意味」「教育と階層」「ライフスタイル」などなど興味深い調査結果がまとめられています。以下、抜粋です。

わが国では1980年代以降、未婚率、初婚年齢、そして生涯未婚率が上昇し続けている。いわゆる「未婚化」「晩婚化」そして「非婚化」の進展である。こうした結婚行動の変化は、わが国の家族形成の形を変え、また社会そのものを大きく変えるものと考えられる。その影響は出生率の低下に現われている。

1970年代以降、わが国の出生率は次世代の人工規模を親世代と同じ水準に維持するのに必要な人口置換水準を下回り、少子化が継続的に進行してきた。

この背景には、女性の高学歴化に伴う社会進出、女性の経済的自立、結婚後の就業継続、伝統的結婚観や男女の性別役割分業に関する考え方の変化等々、新しい時代の女性の考え方や生き方がある。こうした価値観や行動を社会が受け入れ、それに適応した社会システムや家族の在り方などを容認していくのか、あるいは伝統的な価値観に重きを置き、これまでの女性の生き方にこそ幸福があると考えるのかによって、国家や社会の有り様が異なってくる。

1950年代以降1980年代まで、わが国はほとんどの人々が結婚をする「皆結婚社会」と言われてきた。50歳時の未婚率を示す生涯未婚率は、1950年に男子1.46%、女子で1.35%であり、1970年代まで男子で約2%、女子で約4%という低率であった。しかしながら1980年代、そして90年代になると急激に上昇し、2005年の国勢調査をもとに算出した生涯未婚率は、男子が15.96%、女子が7.25%に達した(国立社会保障・人口問題研究所2007)

生産力の観点からみると、再生産期間を未婚で通す女性の割合が7%に達しようとする状態、言い換えると再生産には貢献しない「非婚化」の進展は、婚外子の割合の低い我が国では、直接的に少子化をもたらす。

「非婚化」だけではなく、再生産行動を最も活発に行う年代である20歳代30歳代の女子の「未婚化」も進展している。2005年には20歳から24歳女子では88.7%が未婚であり、20代前半では未婚であることが常態となっている。

再生産の主役であるはずの20台後半では59.0%が、30代前半では32.0%が、30代後半では18.4%が未婚である。こうした「未婚化」の進展の結果、初婚年齢は2005年に29.42歳となり、未婚率の上昇が始まった1980年25.11歳と比較すると、4.31歳の「晩婚化」である(国立社会保障・人口問題研究所2007)

女子だけではない、男子の倍は更なる「未婚化」「晩婚化」「非婚化」が進展している。2005年の男子の年齢別未婚率は、20歳代前半で93.4%、後半で71.4%、30歳代前半47.1%そして後半で30.0%である(総理府統計局2002)。30歳代の未婚率と生涯未婚率ともに女子の約2倍である。また2005年の初婚年齢31.14歳である(国立社会保障・人口問題研究所2007)。

どうでしょうか?非常に興味深い内容ですよね。

「日本人の意識と行動」をふまえた、単身者用1LDK

先に引用した「日本人の意識と行動」に書かれている価値観の変化と結婚行動、この傾向はまだ当分続くと考えるのが普通でないでしょうか? というのは、物事は行き着くところまで行くものですし、行き過ぎた結果、今度はその反動で戻りすぎるくらい戻るという、振り子現象を起こしながらバランスを取っていくもだからです。 そう考えると、晩婚化・未婚化はしばらく続くと考えるべきですから、マンション経営者としては「単身者がしっかり住める住宅」を創っていかないといけないと思います。ここで私があえて「創る」という文字を使ったのは、「今までに無いものを創造する」という気持ちをこめたかったからです。

単身者用マンションのこれまでとこれから

これまでの単身者用マンション、いわゆるワンルームはあくまで「下宿」の延長でした。ワンルームマンションが日本に出現したのが1970年。それ以前、つまり1960年代は下宿か木造アパートで、共同炊事・共同トイレであり、お風呂は銭湯という、いわば「神田川」の世界だったわけです。そこへ登場したのがワンルームマンションでした。 いままで「共同」だった設備が「専用」になるということは、すっごい革命的なことであったわけです。でも、今考えると、ユニットバスは体の大きな男子なら体育座りをしても入れない大きさで、キッチンとは名ばかりでコーヒーかインスタントラーメンしか作れないようなものでした。収納はほとんどなく・・・それでもその時代の若者は「共同→専用」ということだけで、大満足だったわけです。 あれかなんと38年も経った現在、単身者マンションはあくまで腰掛け、間借りという観念がちっとも変っていないわけです(典型的な生産者理論)。単身者を馬鹿にしたようなキッチンとバス、寝ても起きても一部屋という、言い方悪いですが「独房」のような部屋。なのに家賃はファミリーマンションより少し安いだけという、たいへん割高に設定されています。これでは、単身者がかわいそうというか、単身者をナメているというようなマンションなのです。 単身者であっても、ファミリーであっても足を延ばせるお風呂、十分な収納、寝る部屋、食事をするところ、寛ぐところがそれぞれ必要なことには変わりないのではないでしょうか? 単身者だからと言って我慢する必要は全然ないわけです。そこで、私が提案するのが「単身者用1LDK」です。その第一号がJR平塚駅で誕生します(2009年5月予定)。もちろん「外断熱」で上質な温かさ、心地よい涼しさを味わっていただけます。