目先の利回りに走る投資型マンションの衰退

マンション経営は「良いお部屋をつくって、高めの家賃で貸す」これが鉄則です。ところが投資用マンションはその原則を外しています。なぜなら目先の利益に走るからです。 良いお部屋をつくるろうと思うとそれなりのコストが掛りますが、増えたコストを短期で回収することはできませんので、当面の利益率は若干落ます。でも、長期的に見れば必ず有利に経営ができます。そして先の記事でも申し上げた滞納問題など、嫌なめに会うことも少ないのです。 ところが、投資家が投資用マンションを選ぶとき、決め手になるのは「現在の利回り」です。つまり、目先の利回りが0.1%でも高い方へ、どうしても目が行ってしまうのです。

利回り至上主義で基礎体力は後回し

投資家がそうですから、投資用マンションを企画する会社も、目先の利回り競争に走ります。 Aは目先の利回りを追求したマンションで、Bは質のよいマンションですが、利回りはAよりも若干劣るものとします。利回り競争は、マンションが満室になるものと仮定して行われます。机上の計算では当然マンションAの方が利回りは上ですし、新築当初はそのとおりになるでしょう。

入居者が求めるものと異なる投資用マンション

でも、入居者はそれほどバカではありません。だんだんとマンションの質がわかるようになってきます。そうなると、マンションAの入居率は低下し、Bの入居率は上昇してきて、成績は逆転します。こんなことは、誰でもわかることです。本来、賃貸マンション事業というものは超長期事業ですから、「質の良さ」が勝負であることはいうまでもありません。 ところが企画会社は大風呂敷でありながら基礎体力のない会社が多く、10年後、20年後のことを考えるよりも、今、生きていくことが先決になってきます。しかも、「質の良さ」というものは表現しにくく、営業にも苦労します。その結果、目先の利回りを追求した、その場逃れの投資用マンションが生産されることになります。

大量生産されるクズマンション

かくして基礎体力のない投資用マンション、クズマンションが大量生産されたのです。数年前に「ファンド」といって、投資用マンションが債権化されて売り出されましたが、僅か数年でファンドの会社が倒産してしましました。それはあまりにひ弱でした。 そもそも投資用マンションはバブルころに節税目的で作られて、大流行りしました。投資用マンションを全額銀行から借り入れで買って、所得税を還付してもらうのが狙いでした。家賃収入では返済額に追い付きませんが、当時の税制では支払い金利全額と減価償却などが経費として認められたので、税務上の経営は赤字となります。確定申告しますと所得税が還付されたのです。 その後税制がかわり、建物代に対する支払金利は経費として認めるが、土地代に対する支払金利は経費に認められなくなりました。結果、節税対策を売りにしていた投資用マンションの企画会社は倒産しました。

長期的に勝つには質で勝負

話が長くなりましたが、私が言いたいのは、「フェアウエイで勝負しようよ」ということです。本当に入居者に喜んでもらえるようなマンションをつくれば、少しくらい高い家賃でも納得して借りてくれる人はいますし、絶対にそういう人をターゲットにすべきです。 目先の利回りや節税対策に目がくらんで、マンションの基本的な性能や、デザインや住まい心地などを後回しにしては、結局、痛い目に会うのはあなただということです。