マンション経営はローリスク・ローリターン

マンション経営はローリターン

世の中には次の二種類の事業があります。
  • ハイリスク・ハイリターンな事業
  • ローリスク・ローリターンな事業
ハイリスク・ハイリターンとは文字通り「危険性が大きいけど儲かれば大きい」という、いわばバクチ性の強い事業です。ハイリスク・ハイリターンな事業にはもう一つの特徴があります。それは「短期勝負」であるという点です。短期勝負で勝った者は次の勝負に挑み、連勝すれば大金持ちに、負ければ借金が膨らみ、みるみるうちに破産します。 その点、賃貸マンション経営は明らかにローリスク・ローリターンな事業です。事業費が大きい割りには利益率が少なく、何十年もかかる長期な事業です。こう説明するとマンション経営はせんぜん魅力がないように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ローリスクという点ではマンション経営に勝る事業はまずありません。

一般的な店舗経営の場合

たとえば街には居酒屋やカフェ、ケーキ屋さんなど色々なお店がつぎつぎに出来ますが、2・3年もすれば違うお店に変わっている場合が多いはずです。1年も経たないうちに閉店しているケースもめずらしくありません。 どんな小さなお店でもテナントの保証金と内装費や最初の仕入れで少なくとも1000万円は掛かるはずです。それに加えて毎月の赤字が累積して数百万円借金がたまるまでは我慢にガマンをかさねて、ついに行き詰まって閉店するわけです。 外から見ているだけでは「あ、また新しい店にかわったね」というだけのことですが、内側にはすくなくとも千数百万円の損失劇があるわけです。将来自分の店をもつ夢を見た若者がコツコツためてきた貯金がゼロになり、さらに借金がのこるわけです。暗い話になりましたが、賃貸マンション経営はどうでしょう?

賃貸マンション経営の場合

マンション経営のリスクとして素人が思いつくものは次の2つでしょう。
  • 入居者がいなかったらどうしよう?
  • 2つ目は「金利が上がったらどうしよう?
ということですね。これらの不安はたしかにリスクではありますが、対策が可能です。どちらのリスクにも対応しながら、長いながい30年という年月を乗り切っていけるのがマンション経営ですから、利益率はそれほど良くありません。 どれくらいかというと、例えば事業費(建築費以外の諸費用全て含む)が1億円として、毎年の収益は1200万円程度です(人口が100万人くらいの都市のまあまあ便利な立地の場合)。そこから固定資産税をはじめマンションを維持していくためのコストや、借入金を返済した残りは、300万円くらいです。 もちろん都内であるとか、主要駅のそばであるとか、セレブの好む場所とか地名であれば、収入はぐっと上がります。また、逆に300万円も残らないような場所ではGOサインを出してはいけません。 では、300万円を多いと見るか、少ないと見るかということですが、稼男さん(仮名)は「1億円も投資して年間300万円なら、利率3%だから、全然よくない。1億円も投資するくらいならアメリカかオーストラリアの国債を買ったほうがマシ。5%は貰えるよ」といいました。 一瞬なるほどと思うかもしれませんが、ここで良く考えてください。もし手元に1億円という現金があるのなら確かにそのとおりです。でも、無いですよね。マンション経営は1億円というお金を銀行から借りて、それを返済した残りが3%であって、もし、1億円の現金があったとしたら、マンション経営での利益は8%以上になります。 でも、もし1億円の現金があったとしてもそのお金でマンションを建設してはいけません。『借りたお金でマンション経営するからこそ得られる果実』をとりそこなうからです。でも、自己資金を一切使うな、というのではありません。果実ゲットと安全性、税務対策などいろいろな角度から検討して、絶妙のサジ加減にすることがマンション経営の成功の鍵なのです。

余裕のある返済期間の設定

次に、銀行から借りたお金を何年で返すか(返済期間)ということですが、30年がベストです。もちろん20年でも15年でも返せなくはありませんが、税務対策、金利上昇の対策、そして精神ストレスの面から考えると30年返済が良いでしょう。「ストレス」とはお金を借りていることに対するストレスです。 「借金はイヤだから早く返してしまいたい」と言う気持ちはわかりますが、毎月の家賃収入のほとんどを返済にあてると、月末になるといつも心配が襲ってきます。「203号室からまだ家賃の振り込みがない」「思わぬ出費があったらどうしよう」「金利が上がると返せなくなるかもしれない・・・」など、不安はつのる一方です。 それよりも余裕のある経営、つまり毎月銀行に返済しても十分余裕がある計画にしておけば、たいへん気が楽です。そして余ったお金を預金しておいて、年末になったらドンと返済に廻す(内入れ返済する)と気持ちがいいものです。つまり、「追われる立場」ではなく、「追う立場」に就くべきです。

マンション経営はローリスク

正確にいえば「やり方さえ間違わなければローリスクである」ということです。まずは、やり方を間違えた例を挙げてみます。田舎の田んぼの真ん中にマンションが建っているのを見かけたことはありませんか? 電車は走っているけど駅が無い・・・トホホ・・・あなたなら、そんな場所にマンションを建てますか? 建てるはずがありませんよね。でも現実にはあちこちの田舎にマンションが建っています。

相続税対策の誤り

なぜ、そこの地主はマンションを建てたのでしょう? それは「一括借り上げ」と「相続税対策」という言葉に騙されたのです。「一括借り上げ」を約束した業者からはいつでも一方的に解除できる仕組みになっています。何の保証にもなりません。 では「相続税対策」の効果はいかがでしょう? 「そもそも放っておけば、お上に取り上げられる土地」つまり無くなってしまうことが基本と考えている地主さんは「相続税対策」とういキーワードに弱いようです。でも、結論から言えば「相続税対策」をメインに始めたマンション経営は必ずといっていいくらい失敗します。なぜなら儲けることに主眼をおいていないからです。 わたしは「相続税対策」からはじまったクライアントに対しても、あくまでマンション経営で儲けてもらうことを目標に計画します。儲けてもらってこそすべての局面に対応する体力がつくわけです。 儲ける実力のあるマンションだからこそ各種の税務対策に知恵を絞る値打ちがあるのです。お上に取られることを基本においていたのでは、守るどころか資産は減る一方です。「攻撃は最大の防御なり」ですね。 なぜ私がこんな話をしたのか、ローリスクとどんな関係があるのかといいますと、マンション経営を始めて良いかどうかを決める第一関門は立地条件であるということです。当たり前すぎるくらい当たり前な話です。だれに聞いてもそう言うでしょう。でも、具体的な法則を持っている人はいません。私がプロである証として具体的な判断基準をいいます。

立地条件の判断基準

まず、人口100万人クラスの都市を例にとります。人口100万人の都市にはメインの繁華街は1箇所か2箇所しかないはずです。都心で多少高く出しても住みたいと思う地域の面積は3平方キロメートルくらいのものです。人口密度は13000人程度。 その地域でマンション経営をすると前述の300万円のところが400万円、500万円になります。その周囲の30平方キロメートルの部分に30万人くらいが生活し、さらにその外周に数十万人の人が生活しているというのが普通です。都心付近30平方キロメートルの範囲内で、都心と結ぶ鉄道の最寄の駅から5〜10分程度の所はマンション経営を考えてOKという場所です。 では、人口が30万人くらいの都市の場合はどうでしょう。その都市はおそらくどこか大きな都市の衛星都市ですから、大きな都市と結ぶ鉄道の駅、しかも快速電車などが停まる駅から5分〜10分くらいのところだけが、マンション経営を考えてよい土地ということになります。それ以外のところでマンション経営を始めても、すぐに競合がでてきて値段競争になってしまいます。 人口30万人くらいの都市は都心のわずかな部分だけは人通りも多く賑やかですが、ほんの10分も歩くと人通りはまばらになってしまうのが特徴です。人口100万人を超える都市の場合は、中心部の30平方キロを取り巻くようにして、数十万人の人たちが家賃の底支えをしているようなものであり、その人たちがいない小都市の場合は、都心から少し離れればすぐに家賃は下がります。 逆に東京都だと都内だけで1000万人以上、さらにその周りに2000万人の人が底支というより、むしろ中央に対して家賃の圧力をかけているような状態であり、縦横無尽にJR、私鉄、地下鉄が張り巡らされていますので、最寄の駅から近ければ破格の家賃がとれます。 何十年か前に、東京への一極集中を避けようという動きがありましたがたち切れで、むしろ東京への一極集中を促進するような政治が行われたのでこの傾向は今後も変えようと思っても変えられるものではないと思います。

ローリスクな賃貸マンション経営には立地が最重要

ともかく、立地は大事です。いくら魅力的なマンションを創っても、はっきりいってお金を出せる入居者はプライドも高いですし、その地域の空気が気にいらないと入居してくれません。地名のブランド力も大切です。 ですから、マンション経営をローリスクにする第一歩は、あなたの土地がマンション経営に向いているか、もっとはっきりいえば、マンション経営するに値する立地かどうかということを正しく判断することです。 けっして、不動産屋さんや工務店の口車に乗ってはいけません。工務店はマンションが完成すれば代金をもらってさようなら。30年間のリスクを一手に背負うのはあなたです。でも、マンション経営の利益を一手に享受するのもあなたなのです。