入居率を高め、空室率を抑える方法

入居率とは

「入居率80%」というと、たとえば10戸のマンションがあったら8戸は入居しているけど、2戸空いているという状態を思い浮かべるのではないでしょうか? 確かにその通りではありますが、8戸がずーっと入居していて、2戸がずーっと空いているのではないのです。もし、2戸がずーっと空いているのなら、もともとその部屋はいらないというか、ほかの使い方を考えれば良いわけです。自宅にするとか、ほかの人に貸すとか・・・

冗談っぽく聞こえるかもしれませんが、私はその2戸のことを真剣に考えたことがあるのです。なぜなら、銀行が融資するときはどの銀行も口を揃えて「入居率は80%」と言うからです。どれほど立地がよく、どれほど使いやすく、どれほどスタイリッシュで、家賃も安めであっても、行列のできるマンションであっても「入居率は80%」と言うのです。

逆に「こんなマンション、誰も入らないよね」というような田舎のありきたりのプレハブアパートでも80%というわけです。まっ、結論からいえば判断基準を持たないわけです。結局は歴史と市場と今後の日本、いや世界の動向をできる限り研究して入居者の確保に努めないといけないわけです。

「努めないといけない」というと、素人がちょっと勉強したくらいで大丈夫かと不安になるかも知れませんが、そう難しいものでもありません。長いスパンの社会情勢に敏感になることと、ほかの業種ではすでにどんどんやっている工夫をやればいいだけです。

話を元にもどしましょう。では、入居率とはどのようにして決まるのでしょう? ひとつの部屋を例にとって考えて見ましょう。

入居率の求め方と考え方

A室に入居した人は2年間暮らして退去しました。そして次の入居者をさがすのに2ヶ月かかりました。でも、「退去する1ヶ月前には連絡する事」という契約(これが一般的)でしたので、結果1ヶ月間の空室ができました。空室状態が1ヶ月、入居状態が24ヶ月ですので、空室率は、1÷24=4.2%ということになります。逆に入居率は95.8%ということになります。

B室の入居者は1年で退去してしまいました。この場合は、1÷12=8.3%。入居率は91.7%ということになります。

では極端な話し、3ヶ月で退去してしまったらどうでしょう? 1÷3=33.3%であり、入居率はなんと66.7%になってしまいますね。でも心配ご無用。入居時には保証金という名目で、家賃の3〜4ヵ月分を預かって1ヶ月分だけ返すというふうにしています。つまり、家賃の2〜3ヶ月をもらうわけです。

これは何につかうかというと、ビニルクロスの張替えと部屋のクリーニングに使います。法律上は「入居者が常識的に暮らしていても生じる劣化、つまり、だんだん黒ずむとか、すこしは傷がつくとかは仕方が無いことで、修理する費用を入居者から取ってはならない」と決まっています。ですから補修費用は大家さんの利益の中から支払うということになりますが、どんな名目であれ、お金の出拠は入居者からもらったお金には違いありません。

3ヶ月くらいで退去した場合はクリーニングだけで済むことが多いので、次の入居者を見つけるまで空室になっている間の家賃も貰ったのと同じ勘定になります。また、入居者側からすれば、家賃の2〜3ヵ月取られるということは初めから解っているわけですから、ある程度長期間住まないと損と考えるのは当然ですので、3ヶ月で退去するというのはめずらしいケースです。

上記を整理するとつぎのようになります。

  1. 入居者にはできるだけ長い期間滞在してもらった方が入居率は上がる。
  2. 退去したら、次の入居者を見つけるブランクをどうすれば短くできるか?
  3. 入居者が荒っぽく、部屋を壊してしまったら損害を受ける。

有利なマンション経営のために

ここからは、上で整理した各項目について、どうすれば有利な経営ができるのかを詳しくお話します。

1. 滞在期間を長くするために

学生なら卒業すれば退去するのが普通でしょうが、学生以外の人はなぜ退去するのでしょうか? 今の住まいに特に問題がないのならば、エイブルなどに斡旋を払って、保証金も払って、引越し費用を払って、労力を使ってまで引越ししたいとは思わないはずです。また、「そろそろ飽きてきたから引越しでもするか」と気分で引っ越すほど余裕がある世の中ではないはずですし、昇給昇給で「もっといい部屋に住もうぜ!」というほど景気も良くないはずです。

退去する原因として考えられることは、「転勤」「結婚」「子供ができて手狭」になった、そして「更新料」がムカつく、といったことでしょう。そのほか、いつも夜中に大声を出すとか暴れるという「悪質入居者」が隣や上の階にいることが考えられます。

このうち転勤はどうしようもありませんね。では、結婚はどうでしょう。最近は結婚という概念が薄れ、いつのまにか2人で暮らすようになったという、ソフトランディングな感じです。最初から2人で暮らすことを想定した広さと設備にしておけば問題ありません。

では、子供ができたらどうするのか? 子供のいる家族はキッパリとターゲットから外すべきです。何もかもターゲットにしようと欲張ると、どちらからも嫌われます。第一、子供のいる家と大人だけの家では寝る時間が違います。

少し古い言葉になりましたが、ディンクス(ダブルインカム・ノーキッズ)は子供が嫌いです。子供が廊下を走って欲しくないし、子供用の自転車が散らかっているのも嫌いです。子供のいる、子供中心の家庭は分譲マンションへいってもらうと決めましょう。

でも、最初は大人2人だけど、途中で子供ができたらどうなるの?ということですが、もちろん出来ちゃう場合もありますが、確率は低いはずです。そもそも結婚したら子供をつくろうと思っているカップルは、入居する時に分譲マンション型の間取りを好むものです。ディンクス向きの賃貸マンションに入居するカップルはそもそも子供をつくる気がないカップルです。

つぎに「更新料」について。更新料とは貸し手市場のときに生まれたルールで、2年更新で契約した場合、2年が経過したとたんに契約更新といって家賃1ヶ月、ひどい時代では2ヶ月分も余計に取られるというルールです。

こんなひどいルールを未だに使っているから「2年経過する前に引越ししよう!」ということになっるんですね。当然ですよね。ですから、もちろん更新料は無し。むしろ、3年間住んでくれると約束してくれたら、家賃1ヶ月無料!なんてキャンペーンすべきです。

また、心のケアも大切です。奥様のお誕生日にバラが贈られて来た。「誰からだろう? あ、大家さんからだ!」となったらどうでしょう。心は急接近です。自然と滞在期間も長くなることでしょう。

2. 新しい入居者を早く見つけるために

早く見つけるといっても、相手のあることですし、こちらの都合ばかり考えてもうまくいきません。もちろん「行列のできるマンション」を目指して設計するわけですが、行列してもらってる間、外で生活させるわけにいかないわけですから、実際には「行列」は「予約」ということになります。

さきほど、キャンペーンの話をしましたが、他の業界ならどこでもやっているようなアイデアでも、賃貸業界ではまず誰もやっていません。それは、昔、貸し手市場だったことにアグラをかいていることと、建築業界や不動産屋が地主を「お施主様!」「オーナー様!」「大家様!」とお殿様のように奉るからです。そして「殿は何もなさらないで結構です。セッシャが全てこなして見せまする〜」とおだてまくるので「くるしゅ〜ない」とバカ殿になってしまうからです。

マンション経営者とは、お部屋を一括仕入れして、小売するお商売ですから、一生懸命知恵をしぼらないといけません。少なくとも、人任せではいけません。たとえば、退居通知は退居の1ヶ月前というのが常識ですので、「半年前に通知してくれた人は半月分、1年前に通知してくれた人は1か月分キャッシュバック!」とやったらどうでしょう? また、予約してくれる新しい入居者にも、JTBの「早割り」のように3ヶ月前なら空気清浄機プレゼントするとかいくらでも、早めの予約を取ることは可能です。

退居情報を早く知り、早めに予約をとる。そうすれば空室率は低く抑えられ、入居率は90〜95%キープできます。

「うまくいくかなぁ〜?」「いきます。だって、みんなアグラかいているんですから。ちょっとやればすぐに効果がでます」「でも、みんながやったら?」「みんなはやりません。だって、経営者は知恵をしぼらないと!といっているのは私だけで、建築業界も不動産業界もみんな、殿は何もなさらないで結構ですって、言っているんですから。そして今後も言い続けるんです。自分の仕事をゲットするために」

3. 悪質入居者への対策

で・す・か・ら、ターゲットは勝ち組。富裕層です。家賃の安いマンションほど滞納率と破損率が高いというのは、私の想像ではありません。きっちりデータに出ています。格差社会という言葉が定着して、その格差は広がる一方です。二極化した二つのグループ。あなたはどちらのグループをターゲットにしますか?

もしあなたが賃貸マンション経営を始めるとして、何が一番心配ですか?きっと「マンションを建てても、入居者がちゃんと来てくれるだろうか?」ということでしょう。でも実は、他にもっと心配すべきことがあるのです。それは「家賃滞納」です。というのは、家賃を滞納されてもそれを罰する法律がないからです。

信じられないかも知れませんが・・・法律的には家賃滞納のことを「債務不履行」といいます。わずか500円のラーメンでも無銭飲食すれば罰せられます。100均ショップで万引きしても、それは立派な犯罪です。なのに、数万円もする家賃を滞納してもそれを罰する法律がないのです。

ではいったいどのようにして家賃滞納から身を守るのでしょうか? 身を守る方法は「ちゃんと約束を守る人を選ぶ」こと以外にはありません。「そんなの答えにならないよ!」と突っ込まれそうですので、具体的な見分け方をお教えします。

それは、「将来のある人」や「僅かなことでトラブルを起こして信用を失いたくない人」を選べということです。あなたが見分けるのも必要ですが、お部屋に入居者チェックを手伝ってもらうという手もあります。

つまり、良いお部屋をつくって高めに貸すのです。こんなふうに言うと、差別だという人がでてくるものですが、良いお部屋を高い家賃で借りている人の方が滞納率が低いという実績があるのでしかたありません。つまり、良い客層を相手に経営すべきだということです。