体内でのエネルギーの使われ方


栄養素の3つの働き
栄養素の3つの働きのうち、エネルギーの働きはさらに3つに分けられる。

1. 基礎代謝 : 生命維持に必要なエネルギー(7割)
2. 生活活動代謝 : 仕事や家事、趣味など(2割)
3. 食事誘導性熱産生 : 消化などのために内臓が活発に活動(1割)

つまり我々が自由にできるのはわずか2割である。
そのなかでお金を稼いだり、家事をしたり、趣味をしないといけない。
だから、暑さ寒さに耐えるためにエネルギーを使っている場合ではないのだ!

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感


これは気温と、湧きでる温エクセルギー、そして消費エクセルギーのグラフである。
(湧きだす : 飲食によって取り込まれたグリコースの中に、化学的に蓄えられたエクセルギーが細胞活動のために消費された結果として生み出される)
気温が23.5℃のときが最小であり、寒くなるとどんどん大きくなる。そして人体内部でその一部が必ず消費される。
何をするにもエクセルギーが消費される。何をするにも金がいるのと似ている・・・

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感


これは放出される温エクセルギーのグラフである。
0℃のときはなんと11W/㎡も放出される。湧きだすのは9W/㎡であり、そのうち3W/㎡が消費されるからトータル5W/㎡の赤字である。
人間にとってエクセルギーが5W/㎡も赤字になることは、大きな負担だ。
備蓄エクセルギーがどんどん減って、放っておくとアウトになりかねない。
とくに気温が12℃以下になると震えが来てひどく疲れる。

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感



では、暑い時はどうだろう。黒字だ。
家計が黒字なら喜ばしいが、温エクセルギーが黒字というのは困る。
体に熱が蓄積して体温が上がるからだ。
これを排出するためには、またエクセルギーを消費する。
本当に、何をするにもエクセルギーを食う。
ここでもういちど「湧きだしと消費」のグラフを見てみよう。
出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感

出典:日本建築学会論文:人体のエクセルギー収支と温冷感


23.5℃より暑い時もエクセルギーの消費は増える。
これは、汗を出して体温の上昇を抑えるために頑張っていることを意味する。

では、暑くも寒くもないとき、23.5℃の時のエクセルギー収支はどうだろう。
湧きだしが3W/㎡。消費が1W㎡/㎡。放出が2W/㎡である。
つまり、暑くも寒くもない快適な状態であっても2W/㎡を放出しているわけだ。
そう、人間は常に放熱しているのだ。

「快適」「爽快」「楽ちん」「さわやか」にすごすためには、放熱スピードが適度になる空間をつくること。
その具体的な方法は後ほど述べる。

出典:東京都市大学教授 宿谷昌則著 エクセルギーと環境の理論

出典:東京都市大学教授 宿谷昌則著 エクセルギーと環境の理論