宿泊料の最適化(閑散期)

民泊の収益を最大化するコツは「宿泊料の設定が全て」といっても過言ではないでしょう。このグラフは、京都市中心部のリーズナブルなホテルと良く健闘しているゲストハウスの料金設定を示しています。(2017年1月分)
1月と2月の来日外客数は11月よりむしろ多いのに、宿泊料金は11月の1/2~1/3くらいまで下がってしまいます。
これは聞き捨てならない事実です。民泊を利用してくれるのは外国人観光客なのに、宿泊料金を決めているのは日本人の国内旅行客であることを肝に銘じてくだい。

外国人vs日本人 宿泊延べ人数 いくら外国人観光客が多くなったといっても、「延べ宿泊者数」においては、全体のの13%にすぎません。(2015年)  近い将来に外国人観光客が倍増して4000万人になったとしても、それは全体の23%程度ですから、やはりホテルや旅館の宿泊料金料を左右するのは日本人観光客ということになります。
その証拠に、このシーズンで高いのはクリスマスと年末年始(12月30日~1月1日)だけです。11月には軒並み2万5000円だった宿泊料(ツイン1泊・1室分)が8000円くらいまで下がってしまいます。(リーズナブルなホテル)


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グラフの左下に※印で〔ツインに2泊した場合の1泊・1部屋分の宿泊料金〕と分かりづらい表現になっていますが、その理由を説明させてください。
民泊の場合、〔宿泊料金=基本料金+清掃料金+Airのサービス料〕となりますが、基本料金に対して清掃料金の割合が高いので、1泊では宿泊料金が高くなりすぎます。そこで一般的に最短宿泊を2泊に設定します。(民泊に2泊した場合、清掃は1回)
また、旅行のパンフレットではツインの部屋の宿泊料金として〔大人1名様いくら〕と表示されていますが、ツインの部屋を借りるためには大人2人分の料金が必要です。
そこで、ホテルと民泊を公平に比較するため「ツインに2泊した場合の1泊・1部屋分の宿泊料金」としたのです。

キャスト

❑ ホテルギンモンドさん ❑

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京都市内でもっとも便利でわかりやすい場所に1975年から創業している歴史あるリーズナブルなホテルです。(総139室)1995年にリノベーションを行いましたがそれからでも20年ほど経っていること、ツインが19㎡とやや狭いのが現状ですがファサードやエントランス、レストランは魅力的です。

❑ ホテルサンルートさん ❑

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繁華街の四条河原町や、祇園方面にもほど近いリーズナブルなホテルです。(総144室)華やかさはありませんが、スタッフは親切です。
2001年にリフォーム。ツイン19㎡。

❑ Resi stayさん ❑

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私の見立てでは、京都でもっとも本格的な運営をされているゲストハウスです。
1棟で30室という大きなものから、数室のものまで数か所で運営なさっています。法人成りは新しいですが、かなり実績を積んでいらしゃることはまちがいありません。
特筆すべきは独自の宿泊料金設定アルゴリズムを開発なさったことです。
マーケティング→仮説→実践→フィードバックにより改善を重ねて機会損失を避け、利益を最大化されていることがグラフより読み取れます。
また、20~24㎡のお部屋で基本的に3名の宿泊を可能にしていること、
〔S×2+ソファ×1〕 〔W×1+Sw×1〕 〔Q×1+W×1〕
〔w×1+S×2〕 〔S×2+ソファ×1〕 など多彩なバリエーションを備えていることから考えてもかなりのプロフェッショナルです。
さらに、お部屋のしつらえはヘタなシティホテルより優れており、スタッフのおもてなしも期待できます。

❑ Cozyさん ❑

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こちらは既存のワンルームマンションを民泊として合計10室程度を運営なさっているチームです。京都御苑の南西と三条神宮道など人気の場所に限定していらっしゃいます。
業績が良ければそのエリアに増設し、ダメなところは切るという身軽さと行動力に感心させられます。かなり頭が切れる方だと想像しております。

❑ 京らく さん ❑

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10年ほど前に私が設計させていただいた旅館です。
ターゲットは完全に外国人。コンセプトは「日本の生活を体験してもらう。京都文化に触れていただく」です。
完全な和室の旅館で、各室に床の間や掛け軸、一輪挿しがあります。鴨居(襖のてっぺんのレール)は低く、首をちじめて出入りしてもらいます。布団と枕は小さめで足がはみ出す設定です。小さな大浴場もあります。あえて和式トイレも用意しました。どっち向いて用をたすのか・・・説明イラスト付き。
小さな日本庭園もあり、女将によるお茶のサービスがあります。女将というか京都のお母はんの卓越した?京都なまりイングリッシュでの世話焼きも良き旅の思い出になることでしょう。 

各ホテルの宿泊料金設定

❑ ホテルギンモンドさん  ❑

ウィークデイは1万円ですが、土曜日は1万7千円と格差をつけています。
「土曜日だけでも稼いでおかないと」という姿勢は立派だと思います。
その姿勢は年末年始にも見られ、他のシティホテルより思い切った値付けをされています。参考にスべきです。

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❑ ホテルサンルートさん ❑

閑散期において、サンルートさんはギンモンドさんより少しづつ安い設定にされています。しかし繁忙期になると逆にギンモンドさんより高い値付けをされていることに注目したいと思います。繁忙期は高い宿泊料に設定して稼ぎ、閑散期には思い切りよく値下げして稼働率を上げる戦略なのでしょう。
それは賢いやり方だとは思いますが、144室を稼働させる場合の固定経費から割り出されたものであり、小規模なゲストハウスには当てはまりませんのでご注意。
2~3室を自力で運営する場合は、閑散期に無理な値下げをすると骨折り損のくたびれ儲けになりかねません。
くたびれるのはあなただけではなく、お部屋の内装や装備も摩耗します。その分を計算して最低ラインを決めましょう。

❑ Resi stayさん ❑

シティホテルが年末年始料金をとっているのは12月30日~1月1日の3日間だけなのに、Resi stayさんは12月28日~1月8日の12日間ずっと1万8000円をキープしています。Resi stayさんはある程度の実績をもっておられるので、これを参考にしない手はありません。シティホテルさんも参考になさってはいかがでしょう。

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❑ Cozyさん ❑

Cojyさんは閑散期において、シティホテルやResi styayを上回る宿泊料設定になってしまっています。Cojyさんのポテンシャルは(失礼ですが)どう見ても上記より下ですので、当日に近づいた頃に値段調整されることと思います。
でも待てよ・・・これは作戦なのかも知れません。
なぜなら12月ごろになると、ギンモンドさんもサンルートさんも1月の予約が満室になる可能性が大だからです。
彼らは140室規模での運営であり、固定経費が高いので稼働率を重視する必要があり、速い時点での予約を取ることを望みます。
逆にCojyさんの固定経費は安いと想像できますので、シティホテルが満室になった後の「受け皿」としての集客を狙っているのかもしれません。

余談ですが、「コインパーキング現象」を思い出しました。 表通りにあるコインパーキンよりも裏通りのほうが値段が高いという現象です。
はじめは「何考えてんねん?!」とつぶやきましたが、実はそれで正解だったのです。
ドライバーがまず見つけるのは表通りのコインパーキングです。それらが満車になってはじめて裏通りを探します。
裏通りの料金が高くても停めるしかありません。その時点では選択肢がないのです。
逆に、裏通りの料金を安く設定しておいても、そもそも発見されないので意味がないのです。
もちろんAirBnBではまっ先に宿泊料金が表示されるのでコインパーキングの例はそのまま当てはまりませんが、 旅行当日のぎりぎりになって予約するゲストや、極端な話、当日になって宿を探す人には値段が高くても通用するわけです。
コンビニと同じですね。深夜にコーラが飲みたくなったら高い値段とわかっていてもコンビニで買うしかありません。

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❑ 京らくさん ❑

この旅館の大将はガンコです。ですから年間を通じてツインが1万5千円と一定の宿泊料です。おそらく大将は、相手の足元を見て値段を決めるのは嫌なのでしょう。
リーズナブルなシティホテルが繁忙期においては2万円以上の宿泊料を取っているのに、京らくさんは1万5000円であり、5000円以上安く大きな機会損失が生じています。
逆に1月~2月の閑散期では、ギンモンドさんやサンルートさんがツイン1泊1室あたり8000円~1万円まで値下げしているのに、京らくさんは1万5000円とダントツに高く感じてしまいます。

もし、閑散期において京らくさんの宿泊料が通用するとしたら、あなたのゲストハウスは「和のしつらえ」路線で行くべきです。
海外旅行の目的は、初心者にとっては「観光スポットをめぐること」が主ですが、慣れてくると「その国その土地の文化に触れ、その土地の生活を体験すること」を求められる傾向があることは、jetroの調査でわかっていますし、当たり前といえばアタリマエですよね。そうなると、ギンモンドさんやサンルートさんと京らくさんは宿泊料で比較する対象では無いわけです。
さて、この仮説が正解かどうかは、あと2ヶ月すればわかります。乞うご期待!

まとめ

閑散期においてはAirBnBのスマートプライシングが頼りになります。
しかし繰り返しますが、稼働率を上げることばかり考えて、運営費(リネン・清掃・アメニティ・内装の損耗)を無視した値下げは避けましょう。
また京らくさんのように、アクセス、ベッド数以外で選んでもらえる工夫をすることが必要でしょう。