人口30万人規模の衛星都市におけるマンション経営

マンション経営がどんなところでも成り立つのでしょうか?もちろんそんなことは無く、ある一定の人口規模が必要なのですが、同じ人口でも衛星都市と中心になる都市では違います。結論から言うと、強力な大都会の衛星都市(例えば平塚)では成り立ちますが、単独の都市(例えば福井)では成り立ちません。もう少し具体的に説明すると・・・

都市郊外の入居者獲得事情

あなたの土地が、京浜、大阪など大都市へ1時間くらいで通勤できるベッドタウンにある場合は、どのような入居者をターゲットにしたら有利でしょうか? それはあなたの土地がその街の中でどんな位置にあるかで決まります。

もし、主要な駅(京浜、大阪へ直通の快速列車が止まる駅)へ行くために、バスなどに乗らないといけない場合は、その街の企業にお勤めの方を対象にするしかありません。その場合に気をつけないといけないことは、市場がたいへん狭いということです。開業当時はマンション経営が成り立っても、他に強力なライバルが現れるとモロに影響を受けるということが心配です。

人口30万人クラスの街の繁華街やオフフィス街には大勢の人がいて賑やかですし、ビルが立ち並んでいますが、少し離れただけで急にひっそりとして敷地の一区画づつの広さが広くなり、マンションが建ちそうな土地がゴロゴロ出現するというのが人口30万人の街の特徴です。ですから、駅周辺以外の土地でのマンション経営はあまりお勧めできません。

では、主要駅へ10分程度で歩いていけるところに土地がある場合はどうでしょう。ターゲットは明らかに、京浜、大阪などの大都会にお勤めの方です。ここでは「東京都」と「横浜市」と「平塚市」を例にとって、45〜50㎡の1LDKの家賃相場について考察してみましょう。

東京都内を中心に見る家賃相場

東京都はご存知のとおり人口1200万人。横浜は近年急成長した都会で、1978年に大阪を抜いて全国で第二位の都市になりました。その後も人口は増え続け、2007年現在の363万人と大阪264万人を引き離しています。これは東京都を中心とする地域にお金も人も一極集中していることを示しますが、ここでは総論よりももっと生活感あふれる話をしたいと思います。

東京と横浜間は約30分弱、横浜と平塚間は約30分強です。定期代にして東京と横浜間で1万5000円、東京から平塚までなら3万円(1ヶ月分)。平塚から東京に通うのに1時間かかるのも疲れるけど、「定期代3万円!」と聞くほうがもっと疲れる・・・いったい何の話しかと思われるかも知れませんが、これらはマンションの家賃に大きく影響をあたる大事な話なのです。

新宿・渋谷・品川など主要な場所で1LDK(45〜50㎡)の家賃は軽く20万円です。IT関連などの住む特別なマンションをではなく、ごくふつうのマンションの相場が20万円です。では横浜ではいくらでしょう。横浜駅から10分くらいのところで12〜13万円です。では、その中間あたりということで、浦田駅で調べてみますと、案の定15万円くらいでした。

横浜に注目

ここで注目すべきは横浜です。夜間人口が約354万人。そのうち他県で従業・就学する人が約51万人という点です。つまり、県外へ通勤・通学している人が51万人もいるということです。つまり横浜は東京の衛星都市であるということです。東京(特別区部)は、夜間人口が835万人で、昼間の人口が1128万人ですから、周囲の都市、さいたま市や千葉市、川崎市などからどんどん通勤・通学で人が集まってきているわけです。

では、静岡はどうでしょう? 県外へ通勤・通学する人はわずかに3870人であり、これは、東京とは距離がありすぎて影響が及ばないということです。

平塚市の場合

横浜市の夜間の人口が354万人で、他県へ通勤・通学者する人が51万人なら、昼間の人口は303万人のはずなのに、横浜市の人口は320万人となっています。と、いうことは他県から17万人の人が流入しているということ。正しく言い直すと、横浜へ通勤・通学できる範囲のところから17万人もの人が来ているということです。この17万人の中にはもちろん平塚市から通っている人も大勢いると考えるのが自然ではないでしょうか。

つまり、横浜市は太陽の周りを回る地球であり、平塚市は地球の周りを回る月のような存在なのです(このたとえ、よけいにわかりにくいですか?)。もちろん、月から太陽に通勤している人も少しはいるとは思いますが、毎月の定期代が3万円とはきついですよね。だから人数はそう多くはないでしょう。

平塚市のマンション家賃

ようやく平塚市駅付近のマンションの家賃の話に近づいてきました。東京の主要区が20万円、浦田で15万円、横浜で12〜13万円なら、平塚はいくらくらいでしょう? 平塚から横浜へ通勤するのに40分くらい、定期代は1万5千円。さあ、あなたならどうする? 横浜のマンションの家賃から定期代を差引いただけならだれも平塚を選びませんよね。

では、通勤につかう時間と体力をいくらと評価するか? まっ、これは時間給にもよりますが・・・いま、対象にしているのは主に30代の人。年収は500万円くらい。時給になおすと(年2000時間として)500万円÷2000時間=2500円ですね。1日に往復で1時間よけいに通勤時間を使ったとして、1ヶ月あたりは、2500円×20日=5万円。

でも、待てよ。横浜駅前に住んだからといって、毎日残業代がつくわけでもないし、サービス残業ってこともあるし、下手をすると帰宅途中にどこかへ寄り道して余計なお金を使ってしまうこともあるだろう・・・てなことを総合すると、いかがでしょう? 5万円の半分だけ安い家賃、つまり2万5千円引き。そして定期代1万5千円を差し引く。

12万5千円−2万5千円−1万5000円=8万5千円

ということになります。考えようによっては、通勤することによって、毎月2万5千円稼げるというわけです。貯金をするのもよし、お小遣いにするのもよし・・・これで、東京〜横浜、横浜〜平塚と、なだらかな勾配になり、どの立地も立場がたつというか、それぞれのバランスが取れるということになります。

ではこの数字を、既存の平塚市駅近くのマンションと比べてみましょう。あまりに突出していないほうが安心ですから・・・。エイブルのHPで検索。33㎡のものと57㎡のものがみつかりました。33㎡のものが7万2千円。57㎡のものが10万5千円と対象になるものが少ないですが、45〜50㎡で気の利いたお洒落なものをつくれば8万5千円は妥当な線ではないでしょうか?

人口30万人規模の衛星都市での賃貸計画

最後にもう一度おさらいをしますが、人口30万人程度の街で、その街に勤める人だけを対象にした賃貸計画を立てるのは危険です。分母が小さいわけですから、近くに1棟か2棟の競合が現れただけでお客の取り合いになります。

平塚市の人口は27万人。横浜市の人口は350万人。東京都の人口は1200万人。競合相手が現れたとしても、直撃することはなく、全体に全体に圧力が少しずつ伝わりますから、伝わってくる圧力は低いですし、時間差もありますので、常に情報を掴むアンテナさえ張っておけば、十分対策を練ることができます。

上記の数字(家賃、通勤にかかる時間と定期代など)はネットでだれでも調べる事ができますので、ぜひ一度ご自身で確かめて、実感を味わってください。