あの人はなぜ、土地活用に失敗したのか

一括借上げの罠

「当社に建てさせていただいた賃貸マンションは、一括借り上げいたしますので、事業主さまはラクラクですよ!」 (事業主とはあなたのことです)

「当社では家賃保証をいたしておりますので、入居者がいてもいなくても事業主さんは安泰です!」
こう言って、飛び込み営業している会社があります。 ○○建託とか△△パレスなどです。

家賃保証システム

 営業マンは大きめの土地であれば、住宅であれ、古いアパートであれ、ガレージであれどこにでも毎週通いつめます。

 土地の持ち主がギブアップするまで通いつめます。

初めてマンション経営を考える人は不安ですので、「一括借り上げ」や「家賃保証」という言葉に魅力を感じるのは無理ありません。

でも実態は皮肉なもので、最後には事業主は捨てられるハメになります。 そのからくりはつぎのとおりです。

◆ リスクを負った者(一括借り上げ会社)が利益を得る権利がある

◆ 利益を出すため、建築費の割に安物のマンションができあがる

◆ だから、入居者に支持されない

◆ 入居者が見つからなくなると、平気で家賃を値下げする

 これが一括借り上げや家賃保証の行く末です。
もともとマンションを入居者目線でつくっていないので、当然の結果です。

前フリが長くなりましたが、エル書房「儲かる大家さんの賢い選択」にすごいことが書いてありましたので、ここで紹介させてください。

著者は稲井理さんといって、大阪で賃貸マンションの管理と入居募集の会社を経営されているプロ中のプロです。正義感がものすごく強く、勇気のある方です。

大家さんの賢い選択

サブリースのからくり

通常、賃貸事業をおこなっている地主さんやオーナーさんの収益源は、入居者からの家賃収入です。
しかし、空室が増えればその分の家賃が入らなくなります。
空室が増えれば増えるほど、地主さんやオーナーさんの家賃収入の総額が減るわけです。
また、入居者の家賃滞納も、賃貸事業の経営を圧迫してしまいます。
こうしたオーナーさんの不安に対して、管理会社が一括で借り上げるサブリースの契約を結ぶことによって、不動産会社や管理会社は、地主さんやオーナーさんから、建物を丸ごと借り上げ、物件に空室があっても、空室保証といって決められた家賃をオーナーさんに払うのがサブリースのシステムです。

サブリースの不動産会社や管理会社は、建物全体の家賃収入分のうち8割から9割を家賃としてオーナーさんに支払います。
集金をはじめ、管理業務も引き受けますから、残りの1割から2割が自分たちの取り分となるわけです。
サブリースは地主さん、オーナーさんにとって、

・ 空室のリスクを負うことなく、一定の家賃収入を安定的に確保できる
・ 煩雑な管理業務に直接タッチせずにすむ
・ 専門知識がなくても賃貸事業に乗り出せる
・ 建物の維持管理やメンテナンスに気を配ってもらえる
・ 確定申告の際、収支ごとの内訳書に、賃借人の名前や賃料を記載しないですむ(賃借人がサブリースをおこなう会社1社となるため)

といったメリットがあるとされています。

サブリース

一方、不動産会社や管理会社(以下、サブリース会社とします)にとっては、地主さん、オーナーさんの物件を借りるほうが、自前で新たな建築物を建てるよりもずっと手軽に賃貸経営ができるのです。つまり、

・ 土地購入や建物の建設のプロセスがなくなる
・ 建物を土地ごと借りることによって、賃貸事業への取り組みが短縮化される
・ 土地や建物、税務面の費用負担を抑えられる

といったメリットがあるのです。

さらに、全国的に需要と供給のバランスが崩れてきている現在、建築会社にとっても建物需要がなくなると倒産してしまいますから、どんどん新規で建てていかなければならないという事情もあるのです。
「サブリースにすれば、面倒なことが何もないし、入居者が入らなくても、家賃の8割から9割が入ってくる。
こんないいシステムなら、是非、サブリースをやるべきだ」 そんなふうに思われる方も多いかもしれません。
たしかにサブリースのメリットに着目すると、いいことだらけのように思えます。
しかし、私は個人的にはサブリースを絶対におすすめしません。その理由をお話します。

サブリースのデメリットを知っておこう

現在、大手の管理会社では、家賃保証や一括で借り上げるサブリースをとり入れているところが多く、とくにハウスメーカーや建築会社系の管理会社は、基本的にほぼサブリースをおこなっています。
地主さんやオーナーさんにとって、不動産会社や管理会社がローン返済期間中にずっと借り上げてくれるのであれば、会社が倒産しない限り、ローンが払えなくなる心配はありませんし、計画通りの収益も上がることになります。
しかし、サブリースには、明確なデメリットがあります。
まず、空室があっても決められた家賃が入ってくるという取り決めですが、これは永遠に同じ金額が入ってくるわけではありません。
契約書上は2年ないしは5年、10年と家賃保証が契約書にうたわれています。
にもかかわらず、地主さんやオーナーさんに支払われる家賃収入=保証料は2年に一度見直すということがよくおこなわれているのです。

なぜこんなことが起こるのかと言うと、借地借家法32条1項の賃料減額請求権の規定(強行規定)があるからです。
借地借家法第32条1項 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若