民泊の収益を最大化するコツは「宿泊料の設定が全て」といっても過言ではないでしょう。このグラフは、京都市中心部のリーズナブルなホテルと良く健闘しているゲストハウスの料金設定を示しています。(2016年11月分) 11月は旅行するのにベストな気候であり、紅葉も手伝って1年で最も宿泊料金が高くなる時期です。 ご覧のように、リーズナブルなホテルのツイン一部屋を借りるのに1泊で2万円から2万5千円もします。 訪日外客数はけして多くはありませんが、この時期は国内旅行客がホテルを抑えてしまうので予約をとろうと思ってもとれません。 グラフの左下に※印で〔ツインに2泊した場合の1泊・1部屋分の宿泊料金〕と分かりづらい表現になっていますが、その理由を説明させてください。 民泊の場合、〔宿泊料金=基本料金+清掃料金+Airのサービス料〕となりますが、基本料金に対して清掃料金の割合が高いので、1泊では宿泊料金が高くなりすぎます。そこで一般的に最短宿泊を2泊に設定します。(民泊に2泊した場合、清掃は1回) また、旅行のパンフレットではツインの部屋の宿泊料金として〔大人1名様いくら〕と表示されていますが、ツインの部屋を借りるためには大人2人分の料金が必要です。 そこで、ホテルと民泊を公平に比較するため「ツインに2泊した場合の1泊・1部屋分の宿泊料金」としたのです。
キャスト
❑ ホテルギンモンドさん ❑ 京都市内でもっとも便利でわかりやすい場所に1975年から創業している歴史あるリーズナブルなホテルです。(総139室)1995年にリノベーションを行いましたがそれからでも20年ほど経っていること、ツインが19㎡とやや狭いのが現状ですがファサードやエントランス、レストランは魅力的です。 ❑ ホテルサンルートさん ❑ 繁華街の四条河原町や、祇園方面にもほど近いリーズナブルなホテルです。(総144室)華やかさはありませんが、スタッフは親切です。 2001年にリフォーム。ツイン19㎡。 ❑ Resi stayさん ❑ 私の見立てでは、京都でもっとも本格的な運営をされているゲストハウスです。 1棟で30室という大きなものから、数室のものまで数か所で運営なさっています。法人成りは新しいですが、かなり実績を積んでいらしゃることはまちがいありません。 特筆すべきは独自の宿泊料金設定アルゴリズムを開発なさったことです。 マーケティング→仮説→実践→フィードバックにより改善を重ねて機会損失を避け、利益を最大化されていることがグラフより読み取れます。 また、20~24㎡のお部屋で基本的に3名の宿泊を可能にしていること、 〔S×2+ソファ×1〕 〔W×1+Sw×1〕 〔Q×1+W×1〕 〔w×1+S×2〕 〔S×2+ソファ×1〕 など多彩なバリエーションを備えていることから考えてもかなりのプロフェッショナルです。 さらに、お部屋のしつらえはヘタなシティホテルより優れており、スタッフのおもてなしも期待できます。 ❑ Cozyさん ❑ こちらは既存のワンルームマンションを民泊として合計10室程度を運営なさっているチームです。京都御苑の南西と三条神宮道など人気の場所に限定していらっしゃいます。 業績が良ければそのエリアに増設し、ダメなところは切るという身軽さと行動力に感心させられます。かなり頭が切れる方だと想像しております。 ❑ 京らく さん ❑ 10年ほど前に私が設計させていただいた旅館です。 ターゲットは完全に外国人。コンセプトは「日本の生活を体験してもらう。京都文化に触れていただく」です。 完全な和室の旅館で、各室に床の間や掛け軸、一輪挿しがあります。鴨居(襖のてっぺんのレール)は低く、首をちじめて出入りしてもらいます。布団と枕は小さめで足がはみ出す設定です。小さな大浴場もあります。あえて和式トイレも用意しました。どっち向いて用をたすのか・・・説明イラスト付き。 小さな日本庭園もあり、女将によるお茶のサービスがあります。女将というか京都のお母はんの卓越した?京都なまりイングリッシュでの世話焼きも良き旅の思い出になることでしょう。
各ホテルの宿泊料金設定
❑ ホテルギンモンドさん ❑ 10月の1万7000円から紅葉シーズンに入ると2万4000円くらいへ上げてきます。 また、土曜日宿泊だけはぐっと高い設定になっています。 週休二日制なのに金曜日の夜は平日並なのは、それが事実なのか昔の間隔を引きずっているのかはわかりません。(緑線がギンモンドさんですが、細い赤線となっているのは既に満室だった日です) 繁忙期と閑散期の宿泊料の割合は211%と控えめな料金設定です。 ❑ ホテルサンルートさん ❑ ギンモンドさんが平日は一定価格なのに対して、サンルートさんは細かな調節をしています。土曜日だけでなく金曜日も休前日扱をしているのが特徴です。それで満室になるなら、ギンモンドさんもそうすべきですよね。 繁忙期と閑散期の宿泊料の割合は227%です。 ❑ Resi stayさん ❑ シティホテルの値動きを調査しつつ、常に少しだけ安い設定で推移していくのはみごとですね。 しかも11月下旬にはシティホテルを超えた値付けをする大胆さ、是非みならいたいものです。 Resi stayさんはシーズン毎に宿泊料にメリハリをしっかりつけているのが特徴で、繁忙期と閑散期の宿泊料の割合は338%とダントツです。そこが民泊経営の肝なんでしょう。 逆に休前日の値上げ率は優しい設定になっています。 ❑ Cozyさん ❑ このグラフにデータは載っていません。なぜならいち早く満室になってしまって、データが取れないからです。 10月20日時点で、11月は12日と17日だけ空室がありました。黄土色の点がそれです。 それを元に他のシーズンのデータをあわせて、Cosyさんが11月にいくらの値付けをしたか推測させてもらいました。 早く満室になると安心ですが機会損失している可能性があります(もっと高くできる) かと思うと、あるシーズンではResi Stayさんより高い設定のときもあります。これはおかしいです、お部屋のしつらえやスタッフの充実はResi Stayさんの方がはるかに上ですから・・・おそらくその日が近づいてきたとき値段調整すると思われます。 ❑ 京らくさん ❑ この旅館の大将はガンコです。ですから年間を通じて同じ宿泊料であり、グラフはまっすぐ一直線。休前日も紅葉のシーズンもクソもなく、グラフをつくった甲斐がありません・・・トホホ。 京らくさんはすごい人気で空室はまずありません。おそらく大将は相手の足元を見て値段を決めるのは嫌なのでしょう。それは素晴らしいポリシーではありますが、、もったいない限りです。 10月から11月初旬までの京らくさんの値段設定は正しいと思います。でも紅葉シーズンに入ってギンモンドさんもサンルートさんも2万円超えしているのだから京らくさんも2万円は通ると思います。1日5000円の機会損失。13室分として1日に6万5千円。1ヶ月で200万円近い機会損失・・・あああ、、、 さきほど、グラフをつくった甲斐はないと言いましたが、実は京らくさんは宿泊料の最適化を計る上ではとても貴重な存在なのです。閑散期に京都中心部のツインのお部屋で1万5千円が通るかどうかの試金石になります。 閑散期においてはギンモンドさんもサンルートさんもツインのお部屋で一泊あたり一室7000円~8000円まで値下げます。その時期に京らくさんが1万5000円で稼働率が6割を超えていたとしたら純利益は京らくさんのほうが確実に上です。 さて、閑散期にどんな結果がでるのか楽しみですね。私達はこれらのデータを元に宿泊料の設定を最適化していきたいと思います。
まとめ
繁忙期においてはAirBnBのスマートプライシングよりも、ライバルとなるシティホテルの宿泊料の少し下のあたりを狙い、思いっきり稼ぐべきです。 ただしそのためにはリーズナブルなシティホテルと張り合えるくらい充実した内容にしないといけません。 その具体的な内容については別のページでお話したいと思います。