ふんわり包みこむ優しい暖かさ

 

誤解が多い作用温度

このような図を平気でネットに発表している人がいるので困ります。

作用温度の間違い

 

少なくとも「対流による熱伝達量」と「放射による熱伝達量」を加重平均してください。一般には、対流熱伝達量:放射熱伝達量=1:2とされているので、答えは左の家が16.7℃、右の家が20.0℃になります。

 

エクセルギー理論で正しく理解

「対流による熱伝達量」と「放射による熱伝達量」を加重平均した作用温度は悪くないですが、アバウトです。近年エクセルギー理論により、体感をより正確な数字で示すことが可能になりました。
上図の左の家と右の家を「エクセルギー消費量等高線図」に示すとこうなります。

周壁温度と室内気温とエクセルギー消費

周壁温度と室内気温とエクセルギー消費


左の家では人体のエクセルギー消費が4.1W/㎡であるのに対して、右の家は2.9W/㎡で済みます。つまり右の家に住んでいる人は、左の家の住民よりも人体のエクセルギー消費が30%も少なくて済むということです。
みなさんは省エネには敏感ですが、人体でのエクセルギー消費にはあまり関心がないようですね。
人体でのエクセルギー消費が少ないということは、体内での負荷が少ないということ、すなわち「楽」であることを示しています。 これは私が勝手に考えたことではありません。私のクライアントである数名のお医者様が医学的見地から平たく説明してくださったことの受け売りです。

ただし人間は複雑であり、精神的ストレス等いろいろな原因で病気になったりするので、体内でのエクセルギー消費が少ないことが健康に対してどれだけ良い影響を与えるのかは確定できません。でも普通に考えて、人体の負荷を軽減してやったほうが臓器が長持ちするのは明白ですよね。

 

従来の家の状態は?

あなたの家に、火の神様と氷の女王様がやってきました。
いつの間にか言い争いになり、火炎攻撃とフローズン攻撃が勃発しました。
しかし両者の勢いはほぼ均衡しており、収支は+20℃でした。
果たしてこれで、落ち着いてリラックスしできるでしょうか?
んなわけ無いですよね・・でもそれが従来の家の実態なのです。

体感としては「足元や背中がゾクゾクする」「熱風にムッとして吐き気さえする」という表現になります。なぜなら人体の負荷が大きな家に居続けると、人体の摩耗が大きいので「嫌な感じを出せ!」と脳が司令するからです。

火炎vsフローズン
諸悪の根源は家の温熱性能がなってないことですが、第二の問題はエアコンやファンヒータの設計の間違いです。 エアコンやファンヒータは「空気を暖めること」を目的につくられており、40℃~50℃くらいの空気が吹出してきます。それがモロに顔にあたると気分が悪くなりますね。
エアコンから吹出した熱風は天井に上がり、冷たい空気は床に落ちます。そして天井に上がった熱風は天井板を温めます。床はいつまでも冷たいままです。

さきほどエアコンの設計に問題があると言いましたが、それらは日本のウサギ小屋仕様になっており、設計者はそうするしかなかったのでしょう。
我々建築家が正しい家造りをしてこそ、家電メーカーも正しい設計ができるのです。


「ふんわり包みこむ、優しい暖かさ」の条件

「冬なのに暖かい。それだけでありがたい」という暮らしは卒業しませんか。
暖かさにも質があります。
上質な暖かさは肌や喉に優しく、ふんわり包まれた感があります。

下記はレベルの低い従来の家での冬季の様子です。

症状1  :足元が冷たく頭が暑い
原因1  :建物がスキマだらけである

症状2  :熱風にムッとして吐き気さえする
原因2  :空気が乾燥しすぎて血液中の水分が不足

症状3  :温度設定を高くしても緊張感がとれない
原因3  :空気の温度が高く、周壁温度(床・壁・天井自体の温度)が低い

これらの不快感を解消し、ふんわり優しい暖かさに包まれるためには複合的な施策が必要です。それを順を追ってご説明したいと思います。

スキマ風を防ぐ

最低レベルの悩みはスキマ風ですね。ご存知のように暖かい空気は上昇しますが、天井付近のスキマを見つけて屋外へ出ていってしまいます。そしてそれを補うように冷たい空気が床下から侵入してきます。侵入してきた冷たい空気をエアコンやファンヒーターで暖めると上昇して天井付近のスキマから出ていく・・・これの繰り返しですからスースーするわけですね。
これを解決するのは比較的簡単です。すべての工程において、スキマを埋めることを念頭に工事をすれば特段お金をかけなくてもかなり解決できるものです。

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スースーするほどのスキマはなくせても、湿気を遮断できるまで気密性を高めるのは簡単ではありません。湿気を遮断しようと思うと、理屈をしっかり知ったうえで工事の手順やコツを習得しないとなかなか合格レベルには達しません。でも湿気を遮断できる家をつくらないと、いくら加湿器で加湿しようと思ってもムダです。
ムダになるだけならまだしも、ヘタをすると壁や天井の内部に侵入した湿気が結露してカビやダニが発生したり、大切な木材を腐らせて大変なことになります。
加湿器をどんどん炊いても湿度計の針が上がらないときは要注意です。

乾いた熱風にめまいが・・・

ところで、エアコンからの熱風を受けるとボ~っとしたり、時には吐き気さえするのはなぜでしょう。エアコンは燃焼しないのでCO2は出しませんが、湿度が過小になってしまうことが大きな問題なのです。

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たとえば東京都の1月の平均気温は6.1℃、平均湿度は55%ですので1kgの空気に含まれる水分は3.2gです。この空気をエアコンで22℃まで加熱すると相対湿度は22%になります。つまり空気は超乾燥状態になるわけです。
超乾燥状態の空気は湿度を欲しがっていますから、乾いたスポンジのように触れたものから湿気を奪い取ります。これを蒸散と呼び、皮膚や鼻・口から水分がどんどん蒸発します。しかも冬季は水分をとる機会が少ないし、コーヒーやお茶など利尿作用があるものを飲むとよけいに体内の水分量が減り、血液がドロドロになって頭痛や吐き気を引き起こします。こんなときはスポーツドリンクを飲んでください。

湿度をコントロールしたい

人体に必要な水分を口から摂取することは大事ですが、建築家としては適度な湿度を自動的に保てる家を創りたいと思うのです。
冬季の湿度は少なくとも50%は確保したいところです。たとえば22℃で50%を維持しようと思うと、空気1kgに含むべき水分は8.4g/kgDaですから、不足分5.2g/kgDa(8.4-3.2g)を足してあげないといけません。
乾燥空気1kgはおおよそ1.2㎥ですから、6畳の部屋なら(10㎡×天井高さ2.5m=25㎥) 25㎥÷1.2㎥/kg=21kg  5.2g/kgDa×21kgDa=110gの水分を補う必要があります。

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この程度の水分を発生する加湿器は3000円くらいでどこにでも売っていますが、あれは加湿器マガイであり加湿できません。実は単なる湯気か霧の発生機であり、窓ガラスはもちろん床・壁・天井やカーテン・ソファの表面に霧を吹きかけたように細かな水滴がくっつくだけで、室内空気の湿度は上がりません。
私は10種類近くの加湿器を試してきましたが、はっきり言って役に立ったのはダイニチのHD-152だけです。

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抗菌フィルターを通した大量の空気を吸い込んで、超微粒子の霧と十分に撹拌してから大口グリルからゆっくり静かに吹出します。その空気がなんとも清々しく深呼吸したくなります。鼻からス~っと吸い込むと肺が洗われるような感じを覚えます。
そして湿度設定ができるのも大きな特徴です。
静音運転なら敏感な方も問題なく眠れますし、お手入れも簡単にできる新設設計です。

ちなみにインフルエンザの菌は気温が22℃の場合、湿度が20%ならどんどん活動しますが、湿度を50%まであげてやるとほとんど死滅するとのことです。

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芯からリラックスできる暖かさ

結論から言いますと、周壁温度(床・壁・天井の表面温度)が室内空気の温度より高くないと「自然とリラックスできる暖かさ」にはなりません。
現存する99%の家の周壁温度は室内空気温度より必ず低くなっており、そのその理由は2つあります。
ひとつは周壁が屋外の冷気の影響を受けて冷却されていること。
ふたつめは、たいていの人は空気を暖めることが暖房だと思っているからです。

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暖房装置がまず空気を暖め、暖まった空気が二次的に周壁を暖めるので、周壁温度は確実に空気の温度より低くなります。モワーっと暖かい空気に包まれると同時に、皮膚は周壁に放射熱を奪われます。これがヒヤッと、ゾクッとする原因であり筋肉が緊張してしまいます。
残る1%の家は十分な断熱性能をもつ外断熱工法であり、屋外の冷気の影響をほぼ受けません。そして建築本体そのものに温水パイプが通っていて周壁をまず暖め、暖まった周壁からの熱伝達によって空気が二次的に暖まるのです。つまり、周壁温度のほうが室内空気の温度より高いのです。

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皮膚から周壁へ向かう熱放射の量は少なく、そもそも代謝のため放熱したいと思っていた量に近いので人体は喜びます。(もちろん体温のほうが周壁温度より高いので、放射熱の収支は人体→周壁となりますが、感覚としては周壁から放射熱を頂いているように感じるので、イラストにはそう書きました)
周壁よりやや低温の空気がスッキリ感を与えてくれます。
これらの説明を如実に示したのが「人体のエクセルギー消費グラフ」です。改めてご覧ください。

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人体のエクセルギー消費が少なくて済む=人体の負担が少ない=人体の摩耗が少ない=人体が安心する=リラックスできる。

CosmoE3の構造

CosmoE3の構造はこのようになっています。

構造1 : 外気の影響を受けないよう、完璧な遮熱と断熱で建築物を包囲
構造2 : 建築物そのものをモロに暖める
構造3 : 防湿層がしっかりしており、思いのまま湿度コントロールが可能
構造4 : ハイブリッド全熱交換(温度と湿度の両方を維持したままフレッシュな
      空気と交換できる機構)


CosmoE3のバリアと蓄熱概念図

 

CosmoE3の建築物本体の温度は冬季で24℃くらいです。エアコンやファンヒータから吹き出す温度と比べれば、いかにマイルドかおわかりかと思います。というか、24℃くらいで本当に暖かいの?とご心配かも知れませんね。でも大丈夫。セーターがいらないくらい暖かいです。
放射熱には引力に左右されず四方八方に向かうので、床・壁・天井は同じ温度になります。24℃になった床・壁・天井に触れた空気は22℃くらいになります。
それをエクセルギー理論で表現すると下記のとおりです。

CosmoE3に住まう人のエクセルギー消費は2.6W/㎡

CosmoE3に住まう人のエクセルギー消費は2.6W/㎡



 

なぜ24℃程度の低い温度で室内が暖かいのか?
それは建物に厚着をさせているからです。超分厚いセーターの上に赤外線をカットするコートを着せます。そのとき大事なのは、継ぎ目なく隙間なく着せることです。そうすれば僅かなエネルギーで暖かくなります。
家が十分着込んでいますから、あなたは薄着ですみ、軽やかです。

では実際にCosmoE3で生活すると、どんな感じになるでしょう。
私のクライアントさんによると「とても居心地が良い」「リラックスする」「落ち着く」という表現になります。