ひとつ上の階級で戦って勝つ方法

「お部屋探しのSEO対策」でお部屋探しのシミュレーションをしましたが、渋谷から東急田園都市線で2つ目の駅、三軒茶屋付近では、まともな(ひとによって基準は違うと思いますが、まあ、たいていの人が合格を出すだろうと思われる)マンションの家賃は、40㎡台前半の1LDKで15~16万円、40㎡台後半の1LDK~2LDKで17万円くらいが相場であることがわかりました。

検索結果をもういちど見てみましょう。
三軒茶屋 徒歩10分 設備が整った 40㎡台検索結果

そのなかに興味深い間取りがあります。 Aのお部屋をご覧ください。 専有面積44.85㎡、家賃16万円のお部屋です。(※ちなみに、まったく同じお部屋が15万5千円で募集されています。)
専有面積44.85㎡ 家賃16万円
専有面積は45㎡近くあるのに、LDKが12帖、寝室が6帖であり、トイレが独立していません。45㎡もあれば、当然トイレは独立させることができますし、収納ももっと充実できるはずです。 なぜ、このお部屋ではそれができないのでしょうか?

原因は「廊下が長い」からです。約5㎡もロスしています。 専有面積40㎡台のお部屋にとって、5㎡のロスは致命傷です。

それに比べるとBのお部屋は、間取りに無駄がありません。 専有面積47.51㎡、家賃16万9千円のお部屋です。
専有面積 47.51㎡ 家賃 ¥169.000
玄関ホールは広く、自転車をもって入れることができます。
廊下はゼロです。その結果、2LDKになっています。
専有面積は47.51㎡で、さきほどのお部屋より2.66㎡広いだけなのに、一部屋多いわけです。

ただし、よく見ないといけないのは、リビングを14.7帖と広く表示することを優先しすぎて自然光がとれず、やや暗いお部屋になってしまっています。

さらに興味深い間取りが見つかりました。このページは間取りの見本市ですね♪♪ 専有面積49.26㎡、家賃16万7千円のお部屋です。専有面積 49.26㎡ 家賃 ¥167.000
このお部屋の特徴は、1LDKとしても使えるし、2LDKとしても使えることです。
LDK8帖と洋間5.5帖をつなげれば、13.5上のゆったりした1LDKになります。 もちろん2LDKとしても使えます。(8帖のLDKは狭いですが、長方形なのでなんとか使えそうです)

カップルで入居される方は、広いLDKを希望しつつ、予備室があればベターと考えている人が多いようです。予備室の使い方はさまざまです。 すごい量の衣服をもっているひとは衣装部屋にできますし、持ち帰りの仕事の多い人はホーム・オフィスにもなります。また、子供ができても引越しせずに住み続けられます。 贅沢をいわなければかなり長期間住み続けることができて、経済的です。

もし、この間取りをもう少しコンパクトにできたら・・・
たとえば15万5千円のお部屋と同じ専有面積で、1LDKとしても、2LDKとしても使えるお部屋が作れたら、そして15万5千円で募集できたらどうでしょう。 鬼に金棒ですよね。 まあ、家賃は16万円くらいでも入居者はこのお部屋を選んでくれるでしょう。専有面積 44.30㎡ 家賃160.000

 

2LDKとして使った場合でも、LDKの広さは12帖もあります。
洋間5帖にはクローゼットもあります。
洋間4帖とLDKをつなげて16帖という広々した部屋にすることもできますし、洋間4帖を子供室にすることもできます。
これで専有面積は44.30㎡です。

さきほどの専有面積49.26㎡のお部屋に比べて4.96㎡も少ないのに、お部屋は広いです。 どうしてそうなるかは、もうご存知ですよね。廊下でロスしていないからです。 このお部屋を三軒茶屋付近につくれば、家賃16万円で十分勝負できます。

玉に傷なのは、専有面積が44.30㎡であること。これは45㎡にすべきです。 45㎡にすれば、「ひとつ上の階級」で勝負できます。 ひとつ上の階級、45㎡以上で検索しますと、最安値のお部屋でも16万7千円ですから、このマンションの家賃設定が16万円であれば、1位で検索されますし、他のマンションと比べて割安感を与えることができます。

ついでに、もうひとつ例をあげさせてください。

40㎡以上の階級と勝負できる35㎡のお部屋のお話です。 お部屋探しのSEO対策で参考にした、三軒茶屋の専有面積42.27㎡、家賃14万9千円のお部屋をもういちどご覧ください。
専有面積 42.27㎡ LDK実質9帖
LDKは11.6帖と表示されていますが、実質的には9帖くらいの使い勝手であるというお部屋です。 そして下の図をごらんください。なんと、専有面積が35㎡しかないのに、ちゃんと玄関もトイレも独立している1LDKです。
専有面積35.00㎡ LDK使いやすい10帖
しかも10帖のLDKにはダイニングテーブルとソファが置けるように考えられてます。本来、賃貸マンションの設計とは、そのお部屋で生活するシミュレーションをしてみて、うまく生活できるようにすべきです。

お部屋の広さの数字だけを合わせていては、SEO対策上は良いかもしれませんが、お客様を実際にお部屋に案内したとき、使い勝手を考えていなければ、満足が行かず契約してもらえません。

このお部屋にはさらに細かな心遣いがあります。 ベッドルームのクローゼットの一部をリビング側から使えるようにしてあります。 普通はめんどくさいのでこんな細かい芸はされていません。 収納の総量は同じでも、リビング側から使えてこそ便利なもの、たとえば掃除機や薬箱、爪切り、レシピ本、ファックスなどの置き場としてとても便利です。ニクいでしょ。

もし、このお部屋を三軒茶屋につくったら、14万円くらいで貸せます。 これはマンション経営者には大きなメリットです。

どれだけメリットがあるのか、計算をしてみましょう。42.27㎡のお部屋が1フロアに5戸あったとしたら、トータルの面積は42.27×5=211.35㎡ですね。211.35㎡のスペースに35㎡のお部屋をつくったら何戸とれるでしょう?211.35÷35=6.03 ちょうど6戸作れます。

専有面積42.27㎡のお部屋の1フロアの売上
  家賃14万9千円×5戸=74万5千円

専有面積35.00㎡のお部屋の1フロアの売上
  家賃14万円  ×6戸=84万円

家賃売上はなんと10万円近くアップしました。

これだとマンション経営にかなりの余裕がでます。 余裕をもって入居者を審査できるので、悪い入居者に占拠される心配も減ります。

最後になりましたが、マンション経営を始める方が例外なく思われること、「新築して10年くらいは満室に近い状態をキープできるけど、古くなと空室が目立ってくるので心配」について少しお話させてください。

「お部屋選びのSEO対策」で、実際にアットホームのサイトを使って、お部屋探しのシミュレーションをしましたが、そのときは下記の順番で篩おとしていきました。

0.駅(田園都市線三軒茶屋)→ 4221件
1.種別(マンション)→ 2906件
2.間取り(1LDK 2LDK)→ 554件
3.専有面積(40㎡)→ 453件
4.こだわりの条件(バストイレ別・エアコン・システムキッチン・追い焚き機能・浴室 乾燥機・洗髪洗面化粧台・温水洗浄便座・オートロック・モニター付インターホン) → 40件
5.駅から徒歩(10分)→ 17件

 その結果、残ったのが17件です。
そして、6番目の絞り込みとして、「新築から10年位内」を指定してみましょう。
篩い落とされたのはわずか2件だけです。で

は、逆の順番で絞込みするとどうなるでしょう?

0.駅(田園都市線三軒茶屋)→ 4221件
1.築年数(10年以内) → 1355件
2.駅からの距離(10分)→ 504件
3.こだわりの条件(バストイレ別・エアコン・システムキッチン・追い焚き機能・浴室 乾燥機・先発洗面化粧台・温水洗浄便座・オートロック・モニター付インターホン) → 34件
4.専有面積(40㎡)→ 17件
5.間取り(1LDK 2LDK)→ 17件
6.種別(マンション)→ 15件

ここからわかることは、「築年数は絞り込みの重要ポイントではない」ということです。
お部屋探しの絞り込みに最も影響があるのは「こだわりの条件」です。
そして、「こだわりの条件」を満たしているものが、結果的に「新築~10年以内」のお部屋なのです。
逆に言えば、「こだわりの条件」を満たしていれば、マンションが古くなっても検索にヒットするということなのです。

ここでもう一度、17件にしぼられた結果をみてみましょう。
三軒茶屋 徒歩10分 設備の整った1LDK 検索結果17件
一番上に、1998年に建てられた(築15年)のお部屋があります。専有面積40.41㎡ 家賃13万8千円です。 くわしく覗いてみましょう。
三軒茶屋 掘出し物件
なかなか良いお部屋じゃないですか。
たしかに、新築物件と比べれば使用感はありますが、新しい建物と比べれば家賃が1万円くらい安いので、お得ですよね。 しかも、徒歩1分です! 掘り出し物かも!

築年数にこだわるのは賢いお部屋探しでないことがわかります。
繰り返しますが、「築年数が古いから空きが目立つ」のではなく、
「入居者が必要としている設備を整えていないと選んでもらえない」のです。

私がこう説明すると、「設備はどんどん新しいのが出てくる。今、最新の設備をしておいても10年もすると時代遅れになって、入居者に選んでもらえないのでないか?」とさらなるご心配をなさる方がいらっしゃいます。

そこで今一度、「全国の賃貸管理会社にアンケートし、この設備がついていないと入居者が決まらないランキング」をごらんください。

1位 : 追い焚き機能
2位 : 独立洗面台
3位 : 洗浄機能付き便座
4位 : TVモニター付きインターホン
5位 : システムキッチン
6位 : エントランスのオートロック
7位 : BS/CSアンテナ
8位 : ウォークインクローゼット
9位 : ガスコンロ
10位 : CATV(7位とかぶる)

 

普通ですよね。1位から3位までは常識ですし、4位と6位はセキュリティとして必要です。5位と7,8,9位ももちろん必要でしょう。

これらは、地に足をつけてまじめに生活するにあたって必要な設備であって、「こだわりの条件」というほどこだわりでもないし、贅沢でもありません。 このほかに絶対に欠かせないのがインターネットの引込み準備配管です。

これから10年、20年の未来に、予測ができないほど進化するのは「スマートフォンに代表される情報機器」であり、車が空を飛ぶようなことは起こりません。
Back to the Future
わたしはタイムマシンのお話が好きで、とくに映画Back to the Future(1985年スピルバーグ総指揮)のファンです。映画の2015年の世界では車が空をとぶことになっていて、楽しみにしていましたが、そんなことは実現しそうにもありません。むしろ、あのスピルバーグでも予測できなかったのがスマートフォンです。
スマートフォンで家電制御
スマートフォンで家電を操作できるようになりますので、そこだけは押さえておきたいと思います。 これからは間違いなく低成長な時代ですので、華美な内装や設備よりも、費用対効果を考えた設計のほうが入居者に支持されると思います。

つまり、どんどん新しい設備がでてきて取り残されるという心配は無用と思います。

それよりも、1LDKとか2LDKとかを小さな専有面積に詰め込んだ時、本当に使える間取りになっているか、必要な家具は置けるかを細かく検討した間取りにすべきです。 しつこいようですが、専用面積や部屋数など「数字」だけを合わせてお部屋探しのSEO対策をしても、実際に住みづらいようなまどりでは結局、選んでもらえません。