断熱と遮熱

「外断熱とは何か?」「内断熱とは何か?」をご説明する前に、そもそも断熱とは何か?を説明させてください。

「断熱」とは、熱を断つと書きます。夏は、屋外の熱が家の中に入ってこないように熱を断たないといけません。逆に、冬は、エアコンやファンヒーターで、せっかく温めた室内の熱を屋外へ逃がさないようにするわけです。これを断熱といいます。
でも実は、「断熱」という捉え方は大雑把すぎるのです。 なぜなら、伝導・対流・輻射(放射)という、3種類の熱の伝わり方があるからです。
中学のとき理科で習ったような気がしませんか? 私もそのような気がします。

温度の高い物体と温度が低い物体が接していると、高い方から低い方へ熱エネルギーが移動して、最終的には同じ温度になります。これを「伝導」といいます。

熱伝導

おでこをくっつける : 熱伝導

熱が伝導で伝わっていくのを遅らせるのが「断熱」です。
これに対して、物体が接していなくても、熱は電波に乗って移動する働きがあり、これを「輻射」(放射)といいます。

火にあたると温かいのは放射熱のおかげ

火にあたると温かいのは放射熱のおかげ

真冬の寒い日でも、太陽に当たると温かいですね。でも、何かの影になって太陽光が当たらないと急に寒くなります。これは太陽からくる赤外線が熱を帯びた電波だからです。これをカットすることを「遮熱」といいます。

銀色のシートで赤外線を遮る(さえぎる)

銀色のシートで赤外線を遮る(さえぎる)

たとえば自動車が暑くなって困るとき、銀色のシートを窓や屋根に掛けると車が焼けるのを防げます。
とても薄い銀色のシートで赤外線を遮(さえぎ)ることができます。
というか、赤外線が熱を帯びた電波を反射させて追い返しているのです。極端な話、キッチンにあるアルミホイールを自動車や家の外側に貼り付けるだけで遮熱できます。
これに対して「断熱材」はとても分厚いものです、薄くても4センチ、分厚いものだと10センチもの厚みがあります。

分厚い断熱材

なぜ、そんな分厚いものが必要なのでしょうか。
繰り返しになりますが「伝導」とは、「温度の高い物体と温度が低い物体が接しているとき、高い方から低い方へ熱エネルギーが移動すること」です。
これを断つ方法として、最も現実的な材料はグラスウールか発泡スチロールです。
どちらもカサが高くて軽い物体です。つまりほとんどは空気です。
その空気を「対流」させないように捕まえてじっとさせているのです。

対流することによって熱が早く全体に伝わる

対流することによって熱が早く全体に伝わる

ちなみに、「対流しない空気」になぜ断熱効果があるかというと、分子の密度が低いからです。本当は真空がベストなのですが、真空状態をつくるのはむずかしく、非常に高価です。

真空断熱材

とても薄い真空断熱材

(2014年パナソニックから真空断熱材が発売されていますが、価格は一般の断熱材の10倍くらいします。省エネできた電気代で元を取ろうと思うと100年かかります)

高い! 真空断熱材

高い! 一般の断熱材の10倍くらい

ですから、今の時点では、「空気を対流させない方法」の費用対効果が優れているので採用しています。
一般的に、断熱の効果は断熱材の厚みにほぼ比例します。ですからどうしても分厚くなってしまうのです。
イメージとしては、断熱というより「保温」です。紅茶ポットを保温するとき、分厚くて柔らかい帽子のようなものをかぶせますよね。この帽子で紅茶の熱が逃げていくのを遅らせるわけです。

紅茶保温 断熱

話がながくなりましたので、ここでひとつまとめましょう。
省エネな家をつくろうと思うと「遮熱」と「断熱」の両方が必要になります。
遮熱と保温の両方に役立つ材料は安く買うことができます。たとえば、お姉さんがくるまっているような材料です。これは確かに温かいと思います。めちゃくちゃエコです。(仕事とはいえ大変ですね・・・)
まあ実際、これを着て生活するのはたいへんなので、家そのものをこんな風な材料でつくれば良いわけです。

アルミシート寝袋

でも、家は耐久性がないといけません。地震や台風、そして火災にも絶えないといけないので、使える材料は限られてきます。もちろんコストも大切です。
それらを模索しながらトップランナー(新しい技術を進んで採用する性格の方)のご協力の元に、設計を進めているのが現状です。